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2023.01.01

ワイン王国・北海道!成長の陰に「山幸」あり〈山﨑編集長☆発〉

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

池田町が独自開発した赤ワイン用のブドウ品種「山幸」
池田町が独自開発した赤ワイン用のブドウ品種「山幸」

 新年明けましておめでとうございます。
 「今年も旨い酒を飲むぞ」と思っているあなた。私もです。

北海道のワイン造りを支える

 TripEat北海道は昨春の開設以来、連載<山﨑編集長のワイナリー巡り>などで道内各地のワイナリーを紹介してきました。今やワイナリー数は約60カ所を数え、国内有数のワイン産地となった北海道。その原動力の1つとなったのが、池田町が独自開発した赤ワイン用のブドウ品種「山幸(やまさち)」です。
 年明け最初もお酒の話。北海道のワイナリー増の陰に「山幸あり」です。

十勝ワインのボトル3種類。右から「清見(きよみ)」「山幸(やまさち)」「清舞(きよまい)」

北海道のワイナリー数は55カ所

 北海道のワイナリー数は、昨秋2カ所増え、2022年11月末時点で55カ所になりました。
 北海道庁によると、9カ所しかなかった2000年から比べると6倍、この10年では32カ所増えたそうです。密集地帯の余市町をはじめ、ワイナリーは全道各地に広がっています。

 ワイナリーが急増した理由としては、まず2000年にワインの醸造免許の規制が部分的に緩和され、家族経営の小規模ワイナリーが増えたことが挙げられます。11年には、余市町が道内初のワイン特区に認定され、ワイン醸造に参入しやすくなったことも追い風に。地球温暖化の影響で、北海道がワイン用ブドウ栽培に適した気候となり、海外からも注目を浴びるようになっていきます。

山幸の収穫風景
山幸の収穫風景
バケツに入ったワイン用ブドウ。
このバケツいっぱいでワイン3本分

ワイン用ブドウ不毛地帯に光

 今では、シャルドネ、ピノ・ノワールなど欧州系のブドウ品種が北海道でも広く栽培され、高品質のワインが造られるようになりました。

 ただ、実はほんの少し前まで、道内の生産者の間では、「道東など夏が涼しすぎたり、雪が少なく寒さが厳しい地域ではワインは造れない」と言われていたんです。
 そんな〝ワイン用ブドウの不毛地帯〟にブドウ栽培やワイン造りの裾野を広げたのが寒冷地に強いブドウ品種「山幸」なのです。

北海道内に現存する最も古いワイナリー「十勝ワイン」の外観
1963年創業の「十勝ワイン」は、北海道内に現存する最も古いワイナリーです

 「山幸」は、十勝ワインで知られる池田町ブドウ・ブドウ酒研究所が開発しました。研究を始めたのは1978年。欧州系の品種「清見(きよみ)」とヤマブドウを掛け合わせた赤ワイン用の独自品種です。

 「山幸」誕生までの苦労は、並大抵ではありません。

2020年にリニューアルオープンした「ワイン城」
「ワイン城」は2020年にリニューアルオープンしました

交配数は2万1000種!!

 そもそも池田町では、寒さが厳しく、かつ雪が少ないため、ブドウがうまく育ちませんでした。そのため町ブドウ・ブドウ酒研究所は、寒さに強いブドウを独自開発しようと、寒冷地に自生するヤマブドウとワイン用ブドウを交配させます。その数、実に2万1000種以上!! そんな気の遠くなるような道のりを経て、ようやく実を結んだのが「清舞(きよまい)」と「山幸」でした。

壁に掲げられたワイン用ブドウの品種登録証

 特に「山幸」は、色も濃く、渋みや味わいが深く、長期熟成も期待できる優れた品種で、2006年に農林水産省に品種登録されました。
 そして2020年11月には、国際ブドウ・ワイン機構(OIV、パリ)にも品種登録されました。国内3品種目で、北海道からは初です。

ワイン城に展示されているブドウの樹
ワイン城にはブドウの樹が展示されています

 これにより、「Yamasachi(ヤマサチ)」と品種名をラベルに表記して、ワインの本場のフランスなど欧州連合(EU)各国に輸出できるようになりました。
 国際品種として登録されたのは、国内では山梨県の「甲州(こうしゅう)」「マスカット・ベーリーA」に続く快挙です。

根の長さが際立つワインの樹
根がこ~んなに長いんです

 今では、雪が少なくブドウの越冬に厳しいとされてきた十勝から北見市に至る道東地域で主力品種として、広く栽培されています。

 19年から20年にかけては、オホーツク管内で初めてとなるワイナリーが2カ所誕生し、十勝管内の帯広市と芽室町にも各1カ所できました。釧路管内の弟子屈町や日高管内の新冠町などにも栽培地が広がっています。

子供たち「銀河」と「未来」

 「山幸」の話はこれで終わりません。
 なんと、22年には「山幸」を自家受粉した「銀河」、そして「清見」とヤマブドウを掛け合わせた品種と「山幸」で交配した「未来」が新品種として農林水産省に品種登録されました。

たわわに実った赤ワイン用ブドウ「未来」
赤ワイン用ブドウ「未来」(池田町提供)

 「山幸」の耐寒性がマイナス31度なのに対し、「未来」はマイナス33・2度、「銀河」はマイナス33・5度と、より寒さに強い品種です。
 また2品種とも「山幸」より収穫時期が約1週間早いという優位性も備えています。

初の白ワイン品種

たわわに実った白ワイン用ブドウ「銀河」
白ワイン用ブドウ「銀河」(池田町提供)

 中でも「銀河」は、「山幸」同士の交配の中から果皮の色素が薄いものを選抜して開発。池田町が国内品種登録した初の白ワイン品種として、今後の活躍に期待が高まっています。

グラスに注がれた十勝ワイン。(右から)山幸、清舞、清見
(右から)山幸、清舞、清見
三大赤ワインの飲み比べセットを紹介する案内板
三大赤ワインの飲み比べができます

 町によると、「未来」のワインとしての味わいは、はっきりとした酸味と穏やかな渋みがあり軽快とのこと。一方の「銀河」は、香味ともに本格スパークリングワイン向きの品種だそうです。

名付け親はドリカムの吉田美和さん

ドリームズ・カム・トゥルー・ヴィンヤードの看板

 ちなみに、この2品種の命名者は、人気バンド「ドリームズ・カム・トゥルー」のボーカルで池田町出身の吉田美和さんです。名前の由来について吉田さんは「『未来』は池田のワイン事業が未来を見据えて発展するように、『銀河』は町外れから見上げる池田町の星空をイメージした」とコメントしたそうです。

 「山幸」と、その子供たちの活躍に期待しましょう。

〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉③相澤ワイナリー 56年ぶりに誕生した十勝に吹く新しい風
ワインの産地・北海道仁木町の「ワイン神社」を訪ねて〈山﨑編集長☆発〉
山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任、23年5月から千歳支局長。

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