
大雪山系の黒岳(1984メートル)と旭岳(2291メートル)のロープウエー片道券などがセットになった「縦走PASS(パス)」が人気だ。「縦走は初めて」という人の利用が目立つ。2千メートル級の山々を1日で縦走できるのは国内でも珍しく、上川管内中部の観光振興を進める大雪カムイミンタラDMOは「日帰りで気軽に縦走できるコース」として愛好家に売り込む。
縦走パスは今季で4年目。2022年の販売数は約100枚だったが、23年は約400枚、24年は約600枚と年々人気は高まる。今年は800枚を目標に掲げ、9月30日まで販売する。
縦走パスは黒岳と旭岳のロープウエーとリフトの片道券、記念のステッカーのほか、今年は大塚製薬(東京)の協力でカロリーメイトなどがセットになる。価格はロープウエーとリフトの片道券の合計と同じ4600円。
DMOは昨年、パス購入者に縦走経験を初めて調査した。アンケートに答えた161人のうち、65・2%が「今回が初めて」と回答した。黒岳と旭岳の間はロープウエーを利用すれば7~8時間で縦走して1日で下山できる。担当するDMOの沢田朋哉さん(23)は「縦走してみたいという新規顧客の背中を押すことができる」と手応えを感じている。
波及効果も現れている。昨年のパス購入者の5割が関東在住で、3割の北海道内よりも多かった。8割の人が縦走の前日か当日、もしくは両日に層雲峡温泉と旭岳温泉に宿泊していた。縦走後は4割の人が旭川市内に泊まる傾向があり、飲食を含めた経済効果が期待できそうだ。
地元のホテルも縦走利用者を後押しする。層雲峡の朝陽亭と朝陽リゾートホテルは、ホテルの朝食時間よりも早く出発する登山者に弁当を提供している。今年から2種類の弁当に地元食堂のチャーシューおにぎりを加えた。
神田愛彦総支配人(53)は「かつては縦走を目的にした団体客もいたが、今は個人客が増えてきている。地元の味を楽しんでもらいながら、初心者でも楽しめる大雪山系の縦走を経験してほしい」と話している。(鈴木誠)
(北海道新聞2025年6月24日掲載)