フランス語でポワロー、日本ではポロネギとも呼ばれる西洋ネギ「リーキ」。長ネギと似た形で、欧州では煮込み料理に欠かせないとされ、癖がなく、加熱すると甘みとうまみが出るのが特長だ。リーキを栽培する十勝管内音更町のたけなかファームを訪ねた。(文・有田麻子、写真・中川明紀)
11月7日。農園の敷地内の気温1~2度に保たれた大型冷蔵庫約200平方メートルに、約3500個の保存用ケースがうずたかく積まれ、まろやかな甘い香りが漂っていた。「今年もいい出来。この冷蔵庫から通年出荷しています」と同農園を運営する竹中章さん(47)は誇らしげに語る。
太さは直径3~6センチ、長さ約40センチ、重さ300~500グラム。一つ手にすると、ずっしり重かった。
同農園は2ヘクタールの畑に約18万本を栽培。3月に種をまき、10月半ばから11月半ばに収穫時期を迎える。生育期間が約8カ月と長く、年輪のように層が重なって、繊維もしっかりと詰まっているのだという。
竹中さんがリーキを作り始めたのは、2007年頃、知り合った帯広市内のシェフからフランス料理で重宝な食材の一つとして、その存在を教えられたことがきっかけだった。本場のフランスに渡ると、「マルシェ(市場)に大小のリーキが売られ、訪れる客が次々と買い求めていました」。
オランダやオーストラリア、ドイツなどの農家も訪問して栽培方法を学びつつ、約50種類の種を取り寄せ、試作を繰り返した。
リーキの根元から白、黄緑、深緑の色がそれぞれ3分の1ずつになっているのが、理想の「美人形」とされる。その形を実現できる、自分の畑に合った種を見つけるのに7~8年かかった。
日本でまだなじみがないため、販路開拓にも苦労し、全国のミシュランの星付きレストランに現物を送るなど地道に営業した。現在は主に関東のホテルや飲食店に出荷するほか、スープ専門店「スープストックトーキョー」(東京)の冷製スープ「ビシソワーズ」に採用されている。
毎年、子どもたちにも広めたいと音更町の小中学校の給食に無料で提供。竹中さんが好きな食べ方は、すき焼きやおでん。「実は和食に合う。しっかり煮込んでも煮崩れしません。この自然な甘さとうまみを多くの人に知ってほしい」と願っている。
同農園のオンラインショップ(https://www.leekman.com/)では、2Lサイズ1本770円で販売している。道の駅おとふけや道内各地のコープさっぽろでも扱う。問い合わせは、竹中さんの電話090・6214・5462へ。
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札幌市在住の野菜ソムリエプロ、蔵崎美佳さん(63)はリーキの調理法について「長ネギの倍以上、じっくりと加熱することで、とろりと軟らかくなる」と助言する。
緑の部分に土が入りやすいのでよく洗う。蔵崎さんの一押しはクリーム煮。リーキをひたひたの水で軟らかくなるまで煮て、ベビーホタテと生クリームを加え、コンソメ、塩こしょうで味付ける。
このほか、マヨネーズとピザ用チーズをかけてトースターで焼いたり、緑の部分を細切りにしてレンジでしなしなになるまで温め、酢みそや粒マスタードで味を付けたりしてもおいしい。「お酒のおつまみにどうぞ。味を付けずにそのまま食べても自然な甘さと風味を楽しめる」と勧める。
保存は湿らせた新聞紙などにくるみ、冷暗所に立てておくとよいという。
(北海道新聞2022年11月17日掲載)
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