【登別】登別沖の海域で近年、サメによる漁具被害が相次ぎ、被害額は年間2千万~3千万円に上っている。5年前から予防のため捕獲し、被害は一部抑えられているが、サメは市場価値が低く捕獲にかかる費用を賄えないことも漁業関係者を悩ませている。こうした状況を変えようと、いぶり中央漁協(本所・登別)は地元の調理人にサメの料理法の考案を依頼。調理法を市民に浸透させて普段から食べてもらう方法を模索している。
捕獲されるサメは、多くがメジロザメ科のヨシキリザメ。熱帯・亜熱帯地域の海に生息し、大きいものは体長3メートルにもなる。もともと夏には北海道沿岸に来遊するが、近年は海水温上昇などの影響で来遊数が増え、10月でも姿を見せる。
カニかご漁のイカやサバなどのエサのほか、刺し網にかかったスケソウダラなどを狙い、網を引きちぎっているとみられる。登別漁港に水揚げする登別、虎杖浜地区の漁具被害は2017年に3554万円にも上った。捕獲の効果で20年度は1970万円、21年度は2350万円に抑えられているものの、過去5年間の累計は1億3230万円。サメに食べられた魚を含めると被害額はさらに膨らむという。
同漁協は被害予防へ17年から毎年8、9月にはえ縄漁を実施。毎年20~35トンを捕獲しているが、他の漁を避けて限られた海域に仕掛けるため、被害を大きく減らすまでは至っていない。
捕獲後も課題は残る。サメは現在、全量を宮城県気仙沼市に出荷する。ただ、運送費が高く赤字で、同漁協の今浦日出男専務理事は「利益が出れば、被害額の穴埋めもできるのだが、そうもならない」と話す。
サメは皮が硬く、鮮度が落ちるとアンモニア臭を発するため、一般家庭では扱いづらい。こうした状況を打開して地域で消費してもらうため、同漁協は料理法の考案を登別温泉街の宿泊施設の料理人でつくる「登別温泉調理師登庖会」に依頼した。
10日に登別温泉のホテルで行われた発表会では、料理人6人が「南蛮漬ちらしずし」「塩こうじ漬けフライサンド」など8品を披露し、同漁協の役員らが試食した。ショウガや日本酒、塩こうじなどでサメの臭みを消し、参加者に「サメとは思えない」と好評だった。
ホテルゆもと登別の渡辺晃紀調理長は「サメは水っぽく臭みのとり方に工夫が必要」。同漁協の本間貞徳組合長は「臭みが消え、おいしく食べることができた。一般家庭にサメ料理が普及するような方法を考えていきたい」と話していた。(高木乃梨子)
(北海道新聞2022年11月16日掲載)