【清水】牧草のみで育てた牛から搾る「グラスフェッドミルク」の生産、加工に取り組む宮地牧場(町旭山)が、畜産と加工の両方で日本農林規格(JAS)の有機JAS認証を取得した。来春にもオーガニック牛乳の製造販売を始める計画で「安全安心な乳製品を届けたい」と意気込む。
十勝農業改良普及センターなどによると、グラスフェッドミルクの生産、加工で認証を受けたのは「管内でも珍しい」という。
同牧場は、高知県で公務員をしていた宮地晋也さん(61)と妻の倫子さん(61)が町内に新規入植し、1992年から始めた。放牧酪農を行っていたが、子牛の病死を機に約20年前から輸入飼料や穀物飼料をやめ、病気や予防のための薬の投与などを行わず自然の力を生かした飼育に変えた。
2020年からは農薬、化学肥料を使わず、自家栽培した牧草のみを与える飼育法「グラスフェッド」を実践。1頭の乳量は一般的な乳牛の約5分の1に減ったが、クリアでよりおいしい味になったという。今は搾乳牛20頭を含む45頭を飼育し、年約40トンの生乳を出荷する。
昨年からはグラスフェッドミルクを使ったバターやフレッシュチーズの「フロマージュブラン」、シャーベットのような食感が自慢のアイスミルクを製造し、評判を呼んでいる。
有機JAS認証の取得は難しく、1年以上かけて準備。畜産は10月13日付、加工は12月8日付で認められた。今後は生乳出荷を減らしながら、付加価値の高いオーガニック牛乳を生産し、健康に気を使う消費者向けに販売する。牧草だけで育てた牛肉「グラスフェッドビーフ」の販売も視野に入れる。
宮地さんは「自然との共存を目標にしてきた。有機JAS認証はそれが認められた。夫婦2人の牧場での商品化は規模や販路など課題も多く、興味ある企業などと連携しながら進めることができれば」と話す。
チーズなどの商品は同牧場のツクツクオンラインショップ(https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000203150)で購入できる。(伊藤圭三)
(北海道新聞2022年12月22日掲載)