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2023.01.13

〈山﨑編集長の1度は行きたい〉仏料理店モリエール「カスベ」のスペシャリテ

山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任。千歳支局長を経て、24年3月から旭川報道部長。

モリエールのカスべ料理の一皿

 全国の食通たちが憧れる札幌の有名フレンチレストラン「モリエール」。これまで2回発行された「ミシュラン北海道」で2回連続で、唯一三つ星を獲得している中道博オーナーシェフの「カスベ」のスペシャリテを味わいにモリエールの門をくぐりました。

客席の並んだモリエールの店内

 フランス語で「オススメの料理」を意味する「スペシャリテ」は、シェフご自慢の得意料理、つまり「店の顔」となる料理のことです。

 北海道を代表する名店のモリエールは、北海道産の食材を主に使っていて、いくつもスペシャリテがあります。3つあるランチコースのうち、真ん中の値段のコース「モリエール」(8600円、税込み、サ別)で提供するのが「カスベ」です。ちなみにカスベはエイのことです。

中道博オーナーシェフ
中道博オーナーシェフ


 最近では少なくなりましたが、かつて北海道の家庭ではよく食べられていたんです。そんな庶民的な食材を、フレンチの中でも「基本」と言われるムニエルの究極の1品に仕上げた料理で、中道シェフは「王道。北海道らしい料理」と評します。

玄関に明かりのともったモリエールの店舗外観

 諸説ありますが、カスベは調理法が確立されるまで、煮ても焼いても食べられず、かつ鮮度が落ちるのが早くてすぐに強烈なアンモニア臭を出すため、「魚のカス」と言われていたのが由来と言われています。
 かわいそうな名前です。

 カスベのスペシャリテは、ドーム形の蓋をかぶせた状態で運ばれてきます。期待を込めて見ている目の前で、パッと蓋が取られると…、真っ白い皿にジャガイモがぽつんと1つだけ。

ジャガイモなどが盛られた真っ白い皿
え?

 「え?」と思わず声をあげると、スタッフがぐつぐつと音を立てる鍋を持ってきてカスベを盛り付け、焦がしバターソースを「ジャッ」とかけました。

 レモンとバターのバランス、そしてクルトンの食感がたまりません。

カスべが入りぐつぐつと音を立てる熱々の鍋
ぐつぐつと音を立てる熱々の鍋が近づいてきました。そして…

 モリエールでは、カスベ同様、ドーム形の蓋を取るとソースや副菜しかなく、熱々の料理が別に運ばれてくる-、という料理が他にもあります。この日も何度も同じ手に、してやられました。

白い皿に盛られた、カスベのムニエル
こんな1皿になります

 中道シェフは「北海道の食材そのものに価値がある」と言います。食材そのものに力がある。そんな良い食材を常に探し求めていく。昔からその地域で食べられている高品質な食材を「お裾分けしてもらう」のです。

 だからこそコースの内容は「その時々の美味しいもの。おのずと決まる」。

モリエールの料理が盛られる前の皿
こちらの「え?」な1皿も…
鍋で調理されているブロッコリー
こうなって

 もう1つ、フランスでの修業中に学んだことは、「高ければ高い方がいい、との考えではなく、地元のお客さんを大事にする」こと。食材代が上がる中、食べに来てくれる人が支払う額でコースを考える。工夫して、びっくりするくらい美味しい料理を提供する。「そうすることが自分たちを守ることになる」と言います。

調理されたブロッコリーが盛られた皿
こうなります

 近年の食材をはじめとする物価の高騰で値上げを余儀なくされてはいるものの、高級店でありながら、ランチコースは5200円(税込み、サ別)から用意しています。

野菜とトマトのスープ
野菜とトマトのスープ
ホタテと大葉の天ぷら
ホタテと大葉の天ぷら

 それは「北海道で生活している人も店に来られるような選択肢も持ちながら、道外、海外の人に『北海道っていいね』と思ってもらえるような料理」を目指しているからです。

 北海道の人たちに普段使いできるレストランを-。世界的な店になっても、そんな思いを貫いています。

お口直しのシャーベット
お口直しのシャーベット


 だからこそ飲食店が大打撃を受けた3年に及ぶコロナ禍でも、モリエールでは地元客を中心に何度も足を運ぶリピーターが増え、常に満席だったそうです。

 一方で、「『フランス料理はこうあるべきだ』との思いに凝り固まっていると足元をすくわれる」と自戒の念を込めて言います。

ポテトグラタン
ポテトグラタン

 例えば定番副菜の1つになっているポテトグラタン。ほっとする味で、毎回楽しみにしている常連客も多いですが、家庭料理なので、東京のフレンチレストランなどではほとんど出さないそうです。

「蝦夷鹿」を使った一皿
蝦夷鹿

 ただ中道シェフにとってポテトグラタンは、23歳でフランスに渡って最初に務めたレストランで初めて担当して「フランス料理って意外と美味しいな」と感じた思い出の味。「フランス料理に敬意を払うため、店をやっている限り、絶対に出し続けよう」と提供しています。
 この日もメイン、白老町産の「蝦夷鹿」に添えられていました。

蝦夷鹿の盛り付け前の様子
蝦夷鹿はこんな風にして提供されます。美味しくて、しかも楽しい!!

 ちなみに中道シェフは、料理の話をすると、会話が止まらなくなり、取材に伺った日は、なんと気づけば7時間以上が経過していました。

 そんな中道シェフの活力を支える1つは、信頼できるスタッフです。

 店があって、料理があって、食べる人が来て、サーブする人がいる。全てそろって「美味しい」となる。共同作業のわくわく感と、サーブするスタッフからの「お客さん喜んでますよ」の一言が大きなエネルギーになる、と。

テーブルに並んだデザートなど
デザートたち


 「価値あるものを提供するには、日々努力するしかない。本当に価値あるものなのかどうかは、皿が戻って来るまで分からない。厨房に下げられた皿がソースも綺麗になくなっているのを見るのが、俺の楽しみなの」

 中道シェフはそう言うと、嬉しそうにニヤリと笑いました。

テーブル上の道産ワインのボトルやグラス
道産ワインをいただきました

※料理は取材当時のもので、「カスベ」と「蝦夷鹿」以外は、現在のコース内容とは異なっています。

モリエール
▽住所/札幌市中央区宮ケ丘2丁目1-1
▽TEL/011・631・3155
▽定休日/水曜
▽ホームページ/https://sapporo-moliere.com/
山﨑真理子
山﨑真理子

 北大水産学部時代に1年間、練習船に乗って遠洋航海に出ていた船乗り。北海道新聞社に入社後は、社会部の警察担当を振り出しに、網走、帯広、釧路など道内各地で勤務。東京勤務時代は政権交代時の民主党の番記者として、鳩山政権誕生を取材した。2022年4月にTripEat北海道を立ち上げ、初代編集長に就任。千歳支局長を経て、24年3月から旭川報道部長。

トリップイート北海道

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