道内各地には山海の食材を生かした地域色豊かな料理があり、食で地域を盛り上げる活動が繰り広げられています。人気のご当地グルメの中から、札幌で味わえる4品をクローズアップしました。(ライター・小野高秀)
目次
カツとバターライス、デミソースが調和*エスカロップ=根室市
喫茶MP4<札幌市豊平区>
店の前には淡い緑色の三輪自動車「ダイハツ・ミゼット (1961年式)」。その型式を店名にしたМP4で人気なのが、根室のご当地グルメ「エスカロップ」です。「オーナーが根室 出身。釧路出身の私も根室に7、8年暮らしたことがあり、2014年の開店からエスカロップを出しているんです」と店長の平間則子さん (52)。札幌で食べられる店は少なく、ネットで探し当てた観光客がキャリーバッグを抱えてタクシーで駆け付けたこともあったそうです。
エスカロップはみじん切りしたタケノコ入りのバターライスの上に薄いカツレツとデ ミグラスソースを添え、サラダ、スープをセットにした定食です。 根室の喫茶店モンブランが発祥で、薄切り肉を意味するフランス語「エスカロープ」が語源。平間さんによると、根室では喫茶店で食事する人が多く、ほとんどの喫茶店がエスカロップをメニューに加えているそうです。
MP4のエスカロップは、通常のバターライスの「白エスカ」とケチャップライスにした「赤エスカ」の2種類。デミグラスソースが見事にカツレツとバターライスに調和して、それぞれの味を引きたてます。
八角柱時計やビクターのニッパー犬の置物、金銭登録機が飾られ、レトロな雰囲気の喫茶店。食後のコーヒーを味わうと、昭和の時代がよみがえり、ゆったりと時間が流れてゆくようでした。
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札幌市豊平区豊平2の1、パロスリバーサイド1階。電話011・817・1555。午前11時半~午後3時(土曜は6時まで)(ラストオーダー30分前)。日曜・祝日、第2・第4土曜、 第2・第4月曜休み。エスカロップ (白・赤) 1100円、ミートカツ(スパカツ) 1100円
外はカリッと、中はふんわり*新子焼(しんこやき)=旭川市
鳥〼(とります)<札幌市中央区>
1967年からのれんを守るススキノの老舗焼き鳥店、鳥〼。創業者の時代から、客に愛されてきた名物が「新子焼」です。若鶏の半身を炭火でじっくりと焼く旭川のご当地グルメで(旭川では「新子焼き」)、3代目店主の矢野秀明さん(47)は「若い鶏だから新子。お客様の6、7割に注文していただいています」と胸を張ります。
創業者と新子焼きの関わりは不明ですが、鳥〼といえば、新子焼として知られ、8年前に店主となった矢野さんも伝統の味を引き継ぎました。
若鶏は十勝管内中札内村の地鶏で、他の鶏よりずっと肉が柔らかいそうです。半身に3本の鉄串を刺して、そのまま豪快に炭火に載せ、ある程度焼けたら、カットして焼き直します。
「外はカリッと、中はふんわりとジューシーなのが喜ばれています」と矢野さん。味付けが塩だけなのは、素材の良さを生かすためでしょう。ほんのりと煙の香ばしい香りがする新子焼をほお張ると、鶏のうまみが口の中で広がりました。
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札幌市中央区南4西5、都志松ビル1階。電話011・251・1389。午後5~11時(ラストオーダー30分前)。日曜・祝日休み。新子焼1680円、焼き鳥は200円から
継ぎ足しでコクのあるミートソース*スパカツ=釧路市
J.cafe<札幌市東区>
熱々の鉄板皿にミートソースがたっぷりかかったスパゲティとトンカツを載せた「スパカツ」。釧路市の老舗レストラン泉屋が考案して広まったソウルフードを提供しているのが、コミュニティドーム「つどーむ」の近くにあるJ.cafeです。店長でシェフの赤代(しゃくしろ)領平さん(42)は釧路市出身。 釧路の泉屋系列店で働いたこともあり、本場の味を見事に 再現しています。
J.cafeは18年ほど前に開店。6、7年前からスパカツをメニューに加えたところ、テレビ番組で取り上げられたこともあって、一番人気のメニューに。 ボリューム満点で、 テーブルに運ばれてもまだ熱い鉄板の上に流れ落ちたソースが「ジュー、ジュー」と音を立て、食欲をそそります。
赤代さんが力を注いでいるのが、ミートソース作り。「作って2、3日寝かせたミートソースを継ぎ足して使うことで、コクが出るんです」。そんな味が釧路出身者に喜ばれ、リピーターになった札幌市民も多いそうです。
店は三愛自動車工業の喫茶部門で、店舗は会社事務所に併設されています。2階にはキッズルームを備えた、広々としたラウンジがあり、子どもを連れたママ友たちの憩いの場にもなっています。
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札幌市東区北42東19、三愛自動車工業内。電話011・781・6555。平日午前9時~午後5時、土曜午前9時~午後4時半(ラストオーダー30分前)。日曜・祝日休み。スパカツ960円、自家製コーヒーゼリーソフト560円
特製だれで うまみたっぷり*小樽あんかけやきそば=小樽市
大衆酒場おたる三幸道庁前店<札幌市中央区>
新鮮な魚介類や野菜を炒めたあんが、硬めに焼いたそばを覆いつくす小樽あんかけ焼そば。 全国のご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で2014年、19年と入賞した小樽の名物料理を味わえるのが、大衆酒場おたる三幸道庁前店です。
小樽の老舗ビアホール、ニュー三幸小樽本店と同様に北海道サッポロライオンが経営。小樽から取り寄せている豚や鶏、オイスターソースで作った特製のたれで、エビやイカ、アサリ、ハクサイ、キクラゲなど8種類の具材を炒めて、うまみたっぷりのあんを仕上げます。
閉店したさっぽろテレビ塔店に代わる形で、20年12月にオープン。伊東摩美店長は「三幸といえば、あんかけ焼そばとして定着し、お昼のメニューでは一番人気です」と話します。 あんかけ焼そばは、立ち飲みの札幌駅前北4条店(北4西3、成友ビル地下1階)などでも提供していますが、客層に合わせて使う具材や価格は店ごとに違うそうです。
店の壁には大きな小樽の観光ポスター。ニシン料理や小樽の田中酒造の酒も取り揃えており、伊東さんは「あんかけ焼そばをスタートに、小樽の味を楽しんでいただきたいですね」と話しています。
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札幌市中央区北4西6、毎日札幌会館1階。電話011・212・1750。午前11時半~午後2時、午後5時~10時半(ラストオーダー30分前)。土、日曜・祝日休み。小樽あんかけ焼そば960円、ニシンの鎌倉焼き1280円
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年1月31日掲載)
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