【白糠】シカ肉やチーズなど白糠産食材を使った創作料理が人気の「レストラン はまなす」(東2)が、後継者の全国公募を始めた。創業57年の同店は、観光客も集まる町のグルメスポット。町内では跡継ぎのいない事業所の後継者探しが課題となる中、同店2代目オーナーの谷口修さん(69)は「3代目募集」に活路を求めた。
白糠産のモッツアレラチーズを載せたスパゲティ、シカ肉ハンバーグと、ラム肉ハンバーグの間にチーズをはさんだ「オールしらぬかミルフィーユ」、シシャモの姿揚げ…。メニューには、谷口さんが考案した町産食材の創作料理が並ぶ。昼食時はほぼ連日、50席の1階フロアが満席になる。
谷口さんは「店も私も元気なうちに、『白糠の味』を伝授したい」として2月半ば、専用サイトで後継者の公募を始めた。年齢やキャリアは問わない。まず従業員として雇用し、谷口さんが約130種の料理のレシピや経営ノウハウを指導後、店を引き渡す。店舗と敷地の買い取りが条件だ。
同店は、谷口さんの父、故英雄さんが1966年に創業。谷口さんは、日大芸術学部を卒業後、HBCラジオで番組制作に携わったが、20代半ばで家業を継ぐと決意。札幌のホテルで修業後の83年に帰郷し、2005年にオーナーシェフとなった。
後継ぎはおらず「70歳で引退し、自分の代で店を閉める」と考えてきた。予定の年齢を目前に、常連客らに「この店は、町民の交流の場で観光資源。残してほしい」と口々に言われ、「長年食材を提供してくれた生産者への責任もある」と考え直した。
谷口さんは「地元生産者とのネットワークごと受け継ぎ、白糠の食の魅力発信に挑んでくれる熱い人に、看板を託したい」と力を込めた。問い合わせは、レストランはまなす、電話01547・2・2188へ。
町経済課によると、約200の町内事業所のうち、経営者が65歳以上で後継ぎのいない事業者は1割ほどになるという。(佐竹直子)
(北海道新聞2023年2月28日掲載)