待ち合わせやデート、おしゃべりの場として愛されてきた喫茶店。近年増えてきたおしゃれなカフェとは一味も二味も違う、昭和から続く老舗を訪ねました。長く愛されるその魅力を、看板メニューとともに紹介します。 (ライター・八島美穂)
古き良き時代に浸る正統派
珈琲プラザ コージーコーナー〈中央区〉
JR札幌駅直結のビルにある「コージーコーナー」は、午前8時の開店から閉店まで、途切れることなく客が訪れる人気店です。1955年に北2西4で開店し、81年にこの場所に移転。幾度かオーナーは変わったものの、店を愛する人たちが引き継いできました。クラシックやジャズが流れるシックな店内では、たばこの煙をくゆらせながら店自慢のコーヒーを味わい、昔ながらのひとときを楽しむ客の姿が見られます。
「何十年と通っているお客さんが多く、歴史の重みを感じます」と話すのは店長の後藤正吉さん。店の雰囲気が変わらないよう椅子やテーブルは修理を繰り返して使い、かつて芸術家のたまり場だった歴史を残すために、ゆかりのある絵画なども展示しています。
何よりも大事にしているのがコーヒーの味。開店当時から専用の器具で長時間かけて抽出するダッチコーヒー(水出しコーヒー)をはじめ、約30年前から自家焙煎(ばいせん)に切り替えるなどオリジナルの味にこだわり、豆の販売も好調です。
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札幌市中央区北4西4、札幌国際ビル地下2階、電話231・8614、8:00~20:30 (日曜・祝日19:00まで)、ラストオーダー30分前、不定休、喫煙可(分煙)
街の人々をつなぐ人情喫茶
コーヒーショップ駅馬車〈厚別区〉
1981年、JR新札幌駅高架下の新札幌名店街にオープンしました。2代目オーナー三ツ瀬和也さんの実家は江別市にあった喫茶店。学生時代は休日になると店を手伝い、「カウンター越しにおしゃべりするなど、人と人が触れ合う場所に魅力を感じていた」といい、12年前に叔父からこの店を受け継ぎました。
「子どもの頃から慣れ親しんだ〝昭和の喫茶店〟がテーマ」。開店当時からの古いテーブルや椅子もそのままに、新聞や漫画本を置き、昭和らしさを貫きます。古い時計やかわいらしい置物なども「若い人たちからはレトロだと、年配の人たちには懐かしいと喜ばれています」。
看板メニューは「濃厚ナポリタン」。老舗ホテルに勤めていた父親の同僚だった料理人らのアドバイスで生まれました。「〝ザ・喫茶店〟をイメージして作り上げた味。ケチャップたっぷりで味が濃く、おなかいっぱいになるように量も多めにしています」
新札幌の職場を定年退職後も毎日地下鉄で通う人や、悩みを相談に来る人など常連客でいつもにぎやか。「人付き合いが希薄になりつつある今、昔ながらの下町のノリでコミュニケーションを大切にしたい」と三ツ瀬さん。
出勤前の一杯を求め、開店と同時に満席になることが多い、地元に根付いた喫茶店。コロナ禍でも1人で楽しめるようダーツを導入し、喫茶終了後は午前0時までバータイムになります。
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札幌市厚別区厚別中央2の5、新札幌名店街1号館1階、電話892・8933、8:00~20:00 (土曜・祝日9:00~18:00)、日曜休み、喫煙可
親子3代が訪れる和風喫茶
札幌新倉屋本店〈中央区〉
1960年、狸小路6丁目に開店。「小樽新倉屋」の流れをくみますが数年後に独立し、独自の製法で和菓子の味を追求しています。
開店当時は1、2階が喫茶、3階で菓子を作っていましたが、69年に製造工場を地下に移し、2階を喫茶とする現在の形に。階段を上ると、ゆったりとした喫茶コーナーが広がります。ソファは入れ替えましたが、店の造りは当時のままで、れんがと木を使った壁際の細工、バラやガス灯を模した照明など、凝った内装が目を引きます。2代目社長の斉藤了文さんは「当時としてはモダンな造りで、みなさんに喜ばれたそう。店の大切な歴史ですからこのまま残していきたい」といいます。
温かいおしるこから、冷たいクリームあんみつまで、甘味メニューがそろい、看板メニューはもちろん「花園だんご」。もちもちとした定番5種類を食べ比べることができます。甘 みは時代に合わせて変えていますが、十勝産小豆など厳選した素材と昔ながらの製法を守っています。
親子3代の常連や、毎日のように訪れる90代の女性もおり、「1人で来てもゆっくりと過ごせるような場所でありたい」と斉藤さん。昭和にタイムスリップしたようなレトロな雰囲気が、心を穏やかにさせてくれます。
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札幌市中央区南2西6、電話281・5191、10:00~18:00 (日曜・祝日17:30まで)、ラストオーダー30分前、無休、全席禁煙
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年3月28日掲載)
〝朝のお目覚め〟を美味しい「モーニングメニュー」で~札幌市中央区内で訪れたい喫茶店&カフェ5選