【平取、日高】平取と日高の両町は室蘭開建と協力し、平取ダムの「堤体(ていたい)」と呼ばれる水をせき止めている堤防の内部に地酒として造っている日本酒を計240本保管し、熟成させる実証実験を始めた。両町の特産品として付加価値を高める狙い。実験は最大5年間を予定している。
平取ダムは沙流川の支流の額平川に建設され、昨年7月に供用を開始。実験は供用に合わせて平取町が提案し、沙流川流域の日高町と共同で実施する。
平取町によると、日本酒を熟成加工する取り組みは道内の酒造会社でも行われており、熟成の効果でまろやかな味になるという。ダムの堤体内は日光が当たらず外気温の影響も受けないため温度や湿度が一定に保たれ、日本酒の保管や熟成に適しているとされる。
平取ダムでは3月30日に両町の職員が、日高町産の酒造好適米「彗星(すいせい)」を使った「特別純米酒 日高彗星結(むすび)」の720ミリリットル入りを120本、平取町産の酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」を使った「びらとり純米酒 涼燗(すずらん)」は720ミリリットル入りを72本、1・8リットル入りを48本、それぞれ堤体内に持ち込んだ。
保管場所は堤体で最も高い地上55メートルにある「堤頂」からエレベーターで約50メートル下に降りた連絡通廊で、長さ約20メートル、幅約4メートル、高さ約2・5メートル。温度は10度前後に保たれているという。室蘭開建は温度や明るさ、紫外線量、湿度の各データを定期的に計測して各町に提供。各町は味や色合いの変化を室蘭開建に伝える。
平取町は1年ごとに試飲し、「涼燗」の仕込みを依頼している小樽市の田中酒造にも変化を見てもらう予定。味が良ければ町内の飲食店で1杯ずつ販売したり、イベントで町民に提供したりする機会をつくる。日高町も毎年数本ずつ取り出して、イベントで町民に試飲してもらう予定。
平取町まちづくり課の山田基生課長は「ダムと一緒に年をとる日本酒があったら面白い」とし、日高町商工観光課の島尻守主幹(現デジタル推進室総括主幹)は「味の違いを楽しんでもらえたら、うれしい」と語る。実験後は結果次第で他の特産品の保管も検討する。(杉崎萌)
(北海道新聞2023年4月20日掲載)