【石狩】市浜益区の「きむら果樹園」で栽培したブドウを100%使用したワインが初めて完成した。同園栽培のブドウで昨年まで10年間続いたワインの醸造プロジェクトを、東京都内でレストランを営む道産子が引き継いだ。札幌市や東京のワインバーなどで販売する予定だ。
ワインは「夕陽の浜益ブラン2022」で、昨年10月に収穫したソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなど赤白各4種類のブドウを仕込んだ。ロゼワインとする計画だったが、脱色作用のある貴腐菌が付着したブドウも使ったため白ワインになった。
プロジェクトは2013年、市内の合同会社「北海道スイーツ&ワイナリー」(花川北)が10年計画できむら果樹園にブドウ栽培を依頼してスタートした。
6年目の19年に初収穫し、岩見沢市のワイナリーが醸造。20年から3年連続で合同会社が売った。ただ、ブドウは果樹園のものだけでは足りず、岩見沢産を取り寄せていた。
プロジェクトは昨年で終了したが、都内で道産ワイン専門のレストラン兼酒屋「イル・ネージュ&sato酒店」を営む佐藤貴理(たかまさ)さん(47)=江別市出身=が取り組みを知り、この年の秋に果樹園を見学。同園が自家醸造する予定だったブドウの出来が「あまりにも良かった」ことから、計8種類、約100キロを購入して東京ワイナリー(東京)に醸造を委託した。
きむら果樹園のブドウだけを使って1月に瓶詰めして、3カ月ほど熟成させたワインは750ミリリットルで88本。酸味や渋みが程よい辛口で、佐藤さんは「8種のブドウだからこそ出せる複雑な味」と自信を口にする。
多くの人に味わってもらおうと小売りはせず、全国のワインバーなどに卸すほか、石狩市内のイベントで提供することも考えている。豚やカモの肉料理のほか、石狩鍋にも合いそうだ。
きむら果樹園を経営する木村武彦さん(67)は「自分の作ったブドウだけのワインができるなんて光栄」と喜んでいる。(和賀豊)
(北海道新聞2023年4月27日掲載)