「海鮮太巻き」ってご存じですか? 桜でんぶや厚焼き卵、かんぴょうなどが入った「太巻き」ではなく、いろいろな刺し身が巻かれた豪華な生太巻きです。
北海道では割と馴染みがあるのではないと思います。近年、恵方巻きがブームになって、一段と目にする機会が増えてきましたが、「海鮮太巻きの発祥は、帯広でしょ?」との驚愕の事実を告げられ、行ってみました帯広へ。
特ダネ(?)は、九州在住の知人からもたらされました。
その人物は、帯広畜産大の学生だった約20年前、地元・長崎市のテレビ局に勤める知り合いから教えられたと言うのです。どこ情報かは不明ですが、「帯広の寿司屋が発祥だ」と。
さて、その「発祥の寿司屋」と目されているのは、1967年創業の「辰巳寿し」です。
実は、筆者の山崎は2002年3月から4年間、帯広報道部に勤務していましたが、そんな話は1度も聞いたことがありませんでした。
念のため、北海道新聞社のデータベースで過去の記事も検索してみましたが、やはり、そんな話題を取り上げた形跡はありません。
さて、真偽のほどは?
入店して、メニューを確認すると…ありました! その名も「辰巳巻」。
早速、注文してみます。
これがその辰巳巻です。
豪華です。おいしいです。ウニも入ってます。
先ほども紹介しましたが、辰巳寿しの創業は1967年です。2代目大将の齋藤辰哉さん(55)によると、創業者だったお父さんが「辰巳巻」の前身となる太巻きを出し始めたのは、「開業後2、3年後だった」とのこと。
時は高度成長期。お店は大繁盛で、店に入りきれないお客さんが外にずらりと並んで待っていたそうです。
「とにかく何でもいいから食わせてくれ」
おなかをすかせた客からの要望に、魚をさばく際に出る「刺し身の端」を適当に巻いて出したところ、「非常に受けた」そうです。
そこで、よりおいしく食べてもらえるよう入れる具材を精査。1970年代前半には、今の辰巳巻の原型となる形になっていたとのこと。
開業の翌年に生まれた齋藤さんは、小学生の頃、寿司に関する専門誌を見ていたそうですが、「自分のうちで出している生太巻きのようなものは一切書かれていなかった」と言います。
なので、辰巳巻は、全国的にも先進的な出し方だったと推察されるという訳です。
寿司屋の団体など、あちこち聞いてみても、発祥に関する明確な記録はなく、お墨付きは得られませんでしたが、確かに、今から50年前には誕生していたのですから、限りなく発祥と言えるかもしれませんね。
当時、帯広の他の寿司屋からは「こんなもの寿司じゃねぇ」と批判されたそうですが、あまりの人気に、その後、他店も同じような海鮮太巻きを出すようになったとか。
ちなみに辰巳寿しは、刺し身の盛り合わせもオススメです。これで1人前なので、初めて行く方は、おなかの空き具合を考えて、何人前にするか決めてくださいね。
余談ですが、ネタ元の知人いわく、「九州では、海鮮太巻きのような生の刺し身を巻いた太巻きは、今も見かけない」そうですよ。さまざまな地域からの移住者によって成長してきた歴史の浅い北海道は、自由な発想「寿司」の概念に囚われない故に、実は海鮮太巻きの先進地だったりするかも知れませんね。
▽住所/帯広市西1条南7丁目14の3 |
▽TEL/0155・24・6665 |
▽定休/日曜 |