【浦河】町は今年、特産の夏イチゴ「すずあかね」に代わる新品種の大規模栽培を試験的に行っている。すずあかねは町内で本格的に栽培を始めてから10年以上が経過し、ライバルの産地も増えてきたことから、品種の更新が迫られていた。新品種は試験栽培の結果、すずあかねよりも甘く、規格外品の割合も少ないことなどが分かっている。町は新品種の栽培を軌道に乗せ、いずれは地域の新たな特産品とする狙い。
町はすずあかねの後継品種の開発を目的として、2017年から農薬メーカー「ホクサン」(北広島)などと共同で町営のビニールハウス(町向別)で20種類の品種の試験栽培に取り組んできた。このうち、すずあかねよりも酸味が抑えられ、日照不足で実が色づかない現象もほとんど見られない品種を後継として有力視し、今年、大規模栽培を行っている。品種名は、苗を提供するホクサンが公表していないが、農林水産省に品種登録を申請中だという。
町は昨年、浦河、様似両町の農家2戸の協力を得て、新品種300株を栽培。同年7、8月に、すずあかねの主な卸先である東京都内の会社にトラックや空輸による輸送試験を行った結果、実の損傷は少なく、日持ちも4週間程度と、すずあかねの2倍長いことを確認した。
町産業課によると、今年は町のビニールハウスのほか、浦河、様似の農家6戸で計1万2千株を栽培しており、収穫後は卸先の企業に、すずあかねとの比較などを聞き取る。現在は肥料の量や収穫時期など最適な栽培方法の研究を重ねており、来年もさらに株数を増やして試験栽培を行いたい考えだ。その後、町内での本格栽培を検討する。
ひだか東農協によると、すずあかねは現在、浦河、様似の両町で計37戸が生産し、22年の生産量は193・7トン、販売額は4億5330万円と、生産量は国内トップクラス。
ただ、近年は高齢化や経営難などで栽培農家数は減少してきている。町産業課夏いちご振興係の池田裕喜係長は「新品種はすずあかねの後継として、地域のブランドになる可能性を大いに秘めている。成功させて、地元の農業振興につなげたい」と話す。(和田樹)
(北海道新聞2023年5月9日掲載)
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