札幌の都心部から地下鉄とバスを乗り継いで 30分ほど。「近くて便利」をキャッチフレーズに掲げる丘珠空港 (札幌市東区丘珠町)の路線が拡大し、利用しやすくなりました。6月からは新潟線の就航も計画され、さらに便利になります。昨年はテレビドラマの舞台にもなった丘珠空港。行楽シーズン本番を前に訪ねてみました。 (ライター・小野高秀)
FDA参入、HAC大型化で旅客回復
丘珠空港は1942年(昭和17年)、旧陸軍の飛行場として設置され、56年から民間との共用に。道内のほか、東京や新潟などを結び、74年には年間旅客数が70万人を数えました。ただ、高度成長期に機体がジェット化、大型化し、滑走路が1400メートル(現在は1500メートル)しかなかった丘珠から航空各社は次々と千歳空港(現新千歳空港)に移転。2010年にはプロペラ機を飛ばす、日本航空(JAL)グループの北海道エアシステム(HAC)だけの運航となり、11年には旅客数が12万8千人にまで落ち込みました。
流れが変わったのが、小型ジェット機を利用するフジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)の参入でした。チャーター便運航を経て、16年に静岡線を就航。18年からは松本線、今年3月からは名古屋(小牧)線も運航し、HACが13年から運航する三沢線を合わせて道外4路線に。HACも機材を36人乗りから48人乗りに更新、さらに、20年に設立された新潟の地域航空会社トキエアが、同社初の路線となる新潟―丘珠線を6月30日から週4回、1日2往復、プロペラ機で運航する予定です。
道外の新興航空会社が相次いで就航した丘珠空港。札幌丘珠空港ビルの菅原直樹総務部長は「観光地としての札幌の魅力のほか、都心に近い立地の良さが評価されている」と分析し、「現在36便の運航本数を将来は70便程度を目標に増やしたい」と話します。
道外便の増加に伴って旅客数も増え、22年度は32万700人で、13年ぶりに30万人を 突破しました。4月上旬にパック旅行で松本に向かった北区の女性2人組は「丘珠は初めて利用しましたが、家から車で10分ほど。本当に便利ですね」と話し、時刻表を見て、次は名古屋線の利用を検討していました。
ただ、小型ジェット機のFDA各便は、短い滑走路では積雪期は滑りやすいため、夏場だけの運航です。 通年運航には滑走路の延長が必要で、札幌市は騒音問題を懸念する地域住民の理解を得て、1800メートルへの延長を目指しています。
デッキに「幸せの鐘」
空港ビル3階の送迎デッキからは、旅客機の発着を間近に見ることができます。 そのデッキの一角に設置されているのが、「幸せの鐘」=写真=。 案内板によると、「1回鳴らすと成績向上」 「2回鳴らすと恋愛成就」「3回鳴らすと健康増進」「4回鳴らすと立身出世」「5回鳴らすと不老長寿」だとか。 あなたは何回鳴らしますか。
お得な「みんなでシニア割」
FDAは、60歳以上なら同行者を含めて6人までが割り引きとなる 「みんなでシニア割」を実施しています。 普通運賃4万円の名古屋線が1万6000円などお得です。予約は2カ月前から出発予定時刻の20分前まで。また、誕生月なら同様に6人までが大幅に割り引きとなる「バースデー割」もあります。
「PICU」の舞台に
丘珠空港では、高度な医療が必要な遠隔地の患者を小型ジェット機で運び、医療機関に搬送する「メディカルウィング」が運用され、道内の医療を支えています。病院の小児集中治療室(PICU)で奮闘する医師の姿を描き、吉沢亮さん、安田顕さんらが出演して昨年放送されたテレビドラマ「PICU 小児集中治療室」のロケも行われました。
「札幌黄」を味わおう
空港ビル2階にあるレストラン「丘珠キッチン」の名物は丘珠町特産のタマネギ「札幌黄」をたっぷり使った「丘珠ラーメン」(930円)と「丘珠カレー」(880円)。ラーメンは麺に札幌黄を練り込み、しょうゆ味のあんかけスープ。札幌黄をじっくり煮込んだカレーは甘みとコクが自慢で、ともにフライドオニオンをたっぷりトッピングしています。「カレーが1番人気で、夕方の便で本州に戻るお客さまに喜ばれています」と本間僚店長。ザンギと丘珠カレーをパンに挟んだ「丘珠ポッケ」(240円)もあります。
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年5月12日掲載)