ちょっといかつい見た目だが美味なのがシャコ。小樽沿岸では春のシャコ漁がたけなわだ。石狩湾のシャコは豊かな漁場で育っているため本州産より大きく、味も良いと言われる。漁期は、春が4~6月、秋は10~12月と年に2回ある。浜へ出向いて水揚げを見ながら、関係者にむき方のコツなどを教えてもらった。
小樽市高島の漁業成田学さん(48)は12日、船揚場兼作業場に据えられた大きな釜でシャコを塩ゆでしていた。「小樽のシャコは大きいし、甘みもある」と笑顔を見せた。「この時期は雌が卵を持っていてうまい。雄は卵に栄養分を取られていない分、身がうまい」と説明する。
漁は刺し網を使う。海底の泥の中にいたシャコが顔を出す際、あらかじめ海底に仕掛けた網にかかる。成田さんは同日午前5時から、弟の広幸さん(46)と船を出した。水揚げは20~30キロで、「型も良く、まあまあの漁」。シャコは餌を求め「しけで海底が濁るほどよく顔を出す」そうで、海が荒れた翌朝がベスト。条件がそろった4日前の8日朝は約50キロ取れたという。
先がL字形の「かぎ」と呼ばれる道具を使い、刺し網からシャコを外す。雄と雌に分け、新鮮なうちにゆでる。味を引き出すため、塩加減が大事だ。
4代目の漁師という成田さんは一年を通じニシン、タコ、アワビ、ウニ、ナマコなどを取る。春のシャコ漁は5月半ばから始まるウニ漁と並行して進める。広い網目を使って、小さなシャコは取らず「前浜を大事にしながら、長くやっていきたい」と話す。
小樽市漁協市場部次長の石山雅一(まさいち)さんによると、資源は減少傾向にあり、水揚げは秋の方が春よりも安定し、6対4から7対3の割合で秋が多いという。
昔はガサエビと呼ばれ、小樽の子どもはおやつ代わりに食べた。今では小樽産はブランド化し、札幌の市場向けのほか、本州の高級すし店からも引き合いがある。地元では主に飲食店などで消費され、一部スーパーでもブランドの「新物」として並ぶ。石山さんは「卸値は、良い物は高いが、量も多いわけではないのでかなり幅がある」と話す。
入荷が少なく卸値も幅があるため、南樽市場(新富町12)では鮮魚9店の半数ほどが提供する。うち1店は正品で1匹400~500円、正品以外は200~300円で販売している。
同漁協は殻のむき方をホームページで紹介する。石山さんは「はさみで両脇を切る場合は、多少切りすぎと思うくらいに切った方が殻を取りやすい」と語る。
地元では天丼やパスタなどで提供される。寿司(すし)和食しかま(花園1)では祝津や高島などの小樽産をすしに使っている。1貫770円。店長の石川哲朗さんは「春は雌の子持ちを楽しみ、秋は雄の脱皮後の身入りの良いうまみを味わってほしい」と話す。
(編集委員 鈴木雅人)
(北海道新聞2023年5月21日掲載)
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