新緑に誘われ、あちこちに旅をしたくなる季節。実際に行かずとも、台湾の雰囲気や味が楽しめる店を見つけました。屋台料理やスイーツを食べながら、ひとときの旅気分を楽しんでみませんか。 (ライター・八島美穂)
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住宅街の小さなスーパー
ニーハオ台湾〈白石区〉
JR平和駅そばの住宅街にある真っ赤なコンテナハウスが、台湾北部・基隆市出身の千葉 未華さんが営む食材と雑貨の専門店「ニーハオ台湾」です。日本人との結婚を機に12年前から札幌で暮らす千葉さんは、コロナ禍で台湾との往来ができなくなり、普段使っていた物が手に入らなくなったそう。同郷の知人たちも同じように困っていると知って一念発起、 2021年に現地から直接仕入れる店を始めました。
輸送用コンテナを改装した店内には、調味料や菓子などの食料品をメインに、文具、バッグといった雑貨もいっぱい。食料品の調理法や日本食向きの使い方を教えてくれるほか、菓子の味見ができる小袋セットなども販売しています。「なじみの薄い調味料も合わせ方次第で食べやすくなるし、スイーツは甘さ控えめであっさり味。近い国なのに違った風味が多く、楽しい発見がありますよ」
3月には3年ぶりに帰郷し、現地の流行を探ってきました。「ベジタリアン向け食品が注目を集めています。長く親しまれている定番だけでなく、今の台湾が伝わるものも紹介したい」と話す千葉さん。旅のアドバイスやオンライン語学指導なども行っています。
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札幌市白石区北郷1条11丁目2、電話080・9203・0147。土・日曜午前10時~午後6時、平日は不定期営業。詳細はインスタグラム(@nihao.taiwan)で。オンラインショップあり
手軽に楽しむ台湾風おやき
雉虎(きじとら)〈白石区〉
台湾のファストフードとも呼ばれる「胡椒餅」(こしょうもち)の専門店。こしょうや混合スパイス「五香粉」が効いた豚肉入りのタネを、小麦粉の生地で包んで焼き上げます。表面はカリッと、中にはジューシーな具材がたっぷりで、香ばしいおやきのようです。
区内の台湾料理店で働いていた土肥博さんは「パンとも肉まんとも違う食感や独特の味付けに驚いた」といい、胡椒餅を広めたいと昨年8月に店を始めました。「コロナ禍で現地に行けなかったため、国内の店を食べ歩いて味を研究し、道産小麦粉を使った独自の味を考案しました」
本場のスタイルと同じく、壺形のタンドール釜を使って焼き上げます。パンチの効いたスパイスと大きめの肉が入った台湾屋台風の「赤」、ひき肉とショウガを使った優しい味わいの「白」(各380円)のほか、2カ月ごとに変わる限定品の計3種類を提供しています。
「生地の発酵や、炭火を使った焼き加減の調整など手間はかかりますが、食事にもおやつにも、酒のつまみにもなります」。月2回ほど、朝食用として早朝販売もしています。
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札幌市白石区菊水3条1丁目、ライムローズ1階、電話011・374・4403。午前11時半~午後5時半、 不定休。詳細はインスタグラム (@koshoumochitenkijitora)で。イートインも可
食と文化の架け橋に
カフェ トレロンパーチ〈南区〉
札幌芸術の森近くにあるカフェは、西区の食品会社「ダイホク」が、付き合いの深い台湾の魅力を広めようと昨年10月に開店。両国の架け橋になりたいとの思いを込め、台湾と北海道を渡る「トレロン(アオバト)」と、止まり木を意味する「パーチ」を店名にしました。
気軽に利用できるようセルフサービス形式で、イートインにもテイクアウトにも対応しています。オリジナルの台湾料理は、フランス料理のシェフだった社長の大場啓二さんが考案。
「牛肉麺」(ニュウロウメン)などの食事メニューや、南国フルーツ入りの台湾茶などが、幅広い客層に喜ばれています。
名物は「台湾カステラ」。ふわふわで口溶けがよく、とろけるような食感が独特で、品切れになることも多いそう。イートインなら、近くの人気店「果林樹」のジェラートが添えられます (550円)。テイクアウト用はプレーンのほか、チョコや季節限定の味も (450円~)。
食料品や、先住民族タイヤル人の工芸品も展示販売。観光地・烏来(ウーライ)のショップと常時オンラインでつなぎ、店内の様子を見たり、来店者やスタッフと交流したりと、生の台湾情報にも触れることができます。
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札幌市南区常盤3条1丁目1、電話011・206・4442。午前11時~午後6時、火曜休み。詳細はインスタグラム (@treron_perch)で
屋台の味と雰囲気を再現
台湾料理 ごとう〈中央区〉
ススキノの路地の奥にあり、 店構えからして異国情緒が漂います。店主の後藤正博さんは、旅の途中に立ち寄った台湾で「活気のある屋台の雰囲気と、日本人にも親しみやすい味に夢中になった」といいます。何度も現地を訪ねて味を覚え、市内のアジア料理店で働いた経験を生かし、2014年に築100年超という石蔵を活用した店を開きました。
メニューは水ギョーザや大きな唐揚げなど定番約20品と、季節料理が10品ほど。ほとんどが台湾の屋台で習った料理を基にアレンジしています。「油控えめのあっさり味が多く、青菜、鶏肉など、一つの食材に絞った料理にひかれた」と後藤さん。現地の味を再現するため、素材を生かしたシンプルな料理に力を入れています。
開店時からの人気メニューは肉ソースかけご飯「魯肉飯」(ルーローハン)。皮付きの豚肉 を五香粉などのスパイスとしょうゆなどで煮込んだ素朴な味わいは、台湾出身者にも好評です。「外食文化が根付く台湾のように、日本人も自由に食を楽しんでほしい」
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札幌市中央区南4条西1丁目、M’s仲町1階、電話011・251・3676。午後5~11時、月曜休み
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年5月19日掲載))
スパイスの風味漂うスイーツ