札幌市豊平区平岸に本店を構え、海外にも店舗がある人気ラーメン店「山嵐」のオーナー大村哲也さん(46)が、南区定山渓の温泉街に、木彫り熊のギャラリーを併設したシューマイ専門店「シウマイハヤマデタベルモノ」(定山渓温泉西4)を昨年12月、オープンしました。20年近く札幌のラーメン界をリードしてきた大村さんが、郊外でたった一人で新規事業を立ち上げたのは、東日本大震災とコロナ禍での経験が大きかったそうです。
せいろのふたを開けると、ふわりと立ち上る湯気。「山」のような形をしたシューマイを口に入れた客から「おいしい!」と歓声が上がります。食事メニューはシューマイとご飯のみ。ショウガがたっぷり入った「ジンジャーシウマイ」、黒コショウを利かせた「ペッパーシウマイ」とそのミックスの3種類です。
「シューマイの専門店ってあまりないでしょ。人がやっていないことをやりたいんです」とにっこり。2005年にオープンした山嵐も背脂たっぷりの個性的な豚骨ラーメンが珍しいと注目を集め、昼時には行列が絶えない人気店です。
シューマイは道産の鶏肉と野菜を、特注した道産小麦100%の皮で包んでいます。「肉の味をしっかり感じられるよう、厳選した道産肉をたっぷり入れています。具は練り過ぎず、食感のやわらかさにこだわりました」。
注文を受けてから蒸し始め、「出来上がるまで、木彫り熊を見ててください」と声をかける大村さん。ギャラリーには、大村さんが集めた大小さまざまの木彫り熊、約200体が飾られています。1年前に市内の画廊で手に入れたのをきっかけに、木彫り熊の魅力にはまり、旭川や阿寒、八雲など全道各地を巡るように。作家とのつながりもでき、「木彫り熊は北海道の文化。道民として広めていかなければ」と決心。昭和の貴重な作品のほか、定山渓の木彫家三好純男さんら、今活躍している作家の作品も展示販売しています。壁には札幌在住のアート作家CHIEさんに描いてもらった木彫り熊と少女の絵も飾られています。
大村さんは、2011年の東日本大震災発生時、仙台港から数百メートルの施設で食のイベントに参加していて、目の前に津波が襲いかかる恐怖を体験しました。「人は自然の驚異になすすべがない。初心に返ってやりたいことをやらなければ」。その思いがコロナでさらに強くなり、新たな挑戦への原動力となったそうです。
大好きな作品に囲まれ、「定山渓の新たな名物になれば。お客さんと木彫り熊について話すのも楽しい。幸せですね」と目を輝かせます。
午前10時~午後5時(無くなり次第終了)。水曜休み。電話090・2691・9906。テイクアウトも可能。(谷織恵)
(北海道新聞地域情報版「さっぽろ10区」2023年5月23日掲載)