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2023.07.27

編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊤道産ワイン産地で美酒を楽しむ

小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

 頑張ったあなたに贈る「ご褒美女子旅」。仕事に家事にと奮闘した自分へのご褒美に、いつもよりちょっと豪華な旅に出かけませんか。道央、道東、道北、道南と北海道を4エリアに分け、各エリアごとに宿や温泉、グルメに地酒…。「ご褒美旅」を提案します。道央編では道産ワインの一大産地、余市、仁木両町を訪ね、美酒を楽しみましょう。

ヴィンヤードとそば店、宿…「3足のわらじ」 ブドウ畑に建つ「naritaya」

多くのワイナリーが並ぶ旭台地区に建つ「naritaya」

 札幌から余市、仁木までは、乗り換え時間にもよりますがJRで1時間から1時間半、高速バスなら直通で1時間40分から1時間50分です。仁木に到着後、まずはお昼ご飯。多くのワイナリーが集まる旭台地区にある蕎麦と日本ワイン「naritaya(なりたや)」に向かいます。店を営む成田真奈美さん、和仁さん夫妻は2020年に東京から移住、21年にこの店をオープンしました。そば打ちを和仁さんが、ホールを真奈美さんが受け持ちます。実はお2人、ワイン好きが高じてヴィンヤードを運営しており、この店を上った丘の約30アールでブドウ約千本を育てています。

そば前のワイン越しに眺めるブドウ畑は格別

 まずはそば前に、成田さんのブドウでつくった「Asahidai245 BLANC 2022」(770円)とお通しプレート(330円)をお願いします。ワインはさっぱりして香りもさわやかで、夏にぴったり。店内には壁2面に大きな窓があり、ブドウ畑を眺めながら味わいます。「実はそこはお隣さんの畑です」と真奈美さん。いいんです、借景でもおいしいワインとブドウ畑の緑で心がのびのびします。お通しは揚げそばと余市産のニシンジャーキーです。

 20年に植えたブドウは当初、22年から収穫、醸造する予定でしたが、真奈美さんいわく、「20年に過保護に育てすぎたので、21年に木に負荷をかけるために実をおとさずにいたら、糖度が上がったので」、前倒しで初収穫したそうです。22年は2回目の醸造。醸造は近くの「ル・レーヴ・ワイナリー」に委託しています。エチケットは真奈美さんの友人で絵本「おばけのマール」の絵を描いている中井令さんにお願いしたそう。エゾシカを中心に、キツネとクマ、ウサギ、アライグマがブドウを盗み食いしています。真奈美さんは「ブドウを食べる天敵なので、ちょっと悪い顔にしてと頼んだら、こうなりました」と満足そうです。

茄子とじゃこのぶっかけ(手前)とカレーせいろ。とても美しいおそばです

 そろそろおそばをいただきましょう。メニューは多くはありませんが、2人が食べてともに合格点を出したものを厳選しています。夏限定の「カレーせいろ」(1210円)と「茄子とじゃこのぶっかけ」(1180円)。そばは二八で、細切り。つややかな美しいおそばです。かつおと昆布、サバ、アジでだしをとったつゆは、きりっと辛口。カレーせいろのつけ汁は一見、普通のつゆに見えますが、底にドライカレーが沈んでいて、とかしながらいただきます。そばを入れて混ぜるとスパイシーなカレーの香りが漂います。ぶっかけには、そばの上に揚げナスと大根おろし、大葉の千切りが載り、たぐると、つるっとした、のどごしのいいそばとカリカリに揚げられたじゃこの食感が楽しめます。油を吸って甘みを増したナスときりりとしたおそばを交互に味わいます。和仁さんにどこかの名店で修業を重ねたのかと思い尋ねると、東京での会社員時代に、毎週土曜日、そば打ち教室に通っていたそうで、「独学、我流です」と言います。

 土日祝日には、数量限定で石臼びき十割そば(プラス110円)と、お料理5~6品を盛り合わせた「蕎麦前プレート」(1100円、飲み物注文で880円)を提供しているそうです。これは、土日祝日に再訪確定です。

ヴィンヤードとそば店、宿の「3足のわらじ」の成田さん夫妻

 そば店の2階は「naritaya lodge」という、ダブルとツインの2部屋のみの小さな宿になっています。夕食付きにすると、しめにせいろそばが付くコース料理を味わうことができます。移住後わずかこの3年余りで、ヴィンヤードとそば店、宿と「3足のわらじ」の2人。農作業も初めてだと言いますが、真奈美さんは「畑に出ると時間を忘れるほど楽しい」と笑顔を見せます。

住所/仁木町旭台257
電話/0135・32・3877
営業時間/午前11時半~午後2時(そばがなくなり次第終了)
定休日/火曜、水曜

丘の上のワイナリーでブドウ畑を眺めながらワインを味わえる 「NIKI Hills Winery」 

ブドウ畑を見下ろす丘に建つ「NIKI Hills Winery」

 せっかくワイナリーがたくさんある仁木に来たので、1軒寄ってみましょう。ブドウ畑の向こうの丘の上に、こんもりとした森を背負ったワイナリーの建物が見えます。naritaya近くの「NIKI Hills Winery(ニキ・ヒルズワイナリー)」です。2015年に余市町の契約農家から仕入れたブドウで初醸造。耕作放棄地だった土地を改良し、16年にブドウの苗を植栽、2019年から自社ブドウでワインをつくっています。

一面が窓で、仁木、余市の市街地も眺められます
カウンターにはグラスとボトルが並びます

 建物の1階はレストランとショップがあります。丘を見下ろす方向に大きな窓があり、室内に光が差し込みます。レストランには10人以上が着席できる長いテーブルといすのほか、アンティーク調のテーブルやいすが配置され、奥にはソファ席もあります。壁いっぱいの窓からは、ブドウ畑や仁木、余市の町並みも望むことができます。

ショップに並ぶ「HATSUYUKI」
ワイン関連グッズもいろいろあります

 ショップではフラッグシップワインの白「HATSUYUKI」のほか、HATSUYUKIのスパークリング、華やかな香りの白「NEIRO」、世界最大規模のワインコンクールで日本の赤ワインとして初めて金賞を受けた「YUHZOME」などのほか、テイスティンググラスやワインオープナーなども扱っています。

地下の醸造室に並ぶ樽。右に赤、左に白が入っています
天井がワイン樽のようにカーブした食事用の部屋

 地下のワイナリーもちょっとのぞかせてもらいました。2千リットルの醸造タンクが並ぶ醸造室や自動で瓶詰めできる機械、発酵室、ワインを熟成させている樽庫などがあります。地下には宿泊客のみが食事できる特別な部屋もあり、天井がワイン樽のようにカーブし、ヨーロッパの古い修道院のような厳かな雰囲気を醸し出しています。大きなセラーもありました。ワイナリーの見学は事前予約が必要です。

ワインを注ぐソムリエ
外の景色を眺めながらテイスティングできます

 1階に戻り、テイスティングします。単体のグラスワインもありますが、テイスティングセットも2種類用意されています。HATSUYUKIとメルロー、ソムリエがその日選んでくれるスペシャルの3種のAセットが2750円、HATSUYUKIとNEIRO、貴腐ワイン「はつゆきLATE HARVEST」の3種のBセットが2200円です。どちらのセットも3種各90ミリリットルずつ。Aセットを選ぶと、スペシャルは2020年のスパークリング、メルローとHATSUYUKIは2021年でした。

 一口目はスパークリングから。泡がきめ細かく、すっきりしていますが、なめらかで舌触りが柔らかです。大量生産されているスパークリングワインはワインに炭酸を注入して作られているものが多くありますが、これはびん詰めした後、びんの中で二次発酵させ、アルコールと炭酸ガスを発生させて発泡させる方法で作られており、泡がきめ細かくなるのが特徴だそうです。フラッグシップのHATSUYUKIは、「北海道らしさを表現したい」と作ったワインで、すっきりした酸味でブドウの力を最大限にいかしてそのままワインにしたような素直な味わいです。和食にも合うそうで、「天ぷらの油をさっと流してくれる」「しょうゆと相性が良く、すしにもぴったり」などと評価を受けているそうです。メルローは渋みは控えめで、ブドウの味がしっかり。

天気が良ければ余市岳などの山々も見られます
ブドウ畑(手前)とナチュラルガーデン

 この日はあいにくの小雨模様でしたが、この丘の上からは、晴れていれば、余市岳や頂白山、石狩湾も望むことができるそうです。丘の斜面には3段階の傾斜を付けたナチュラルガーデンが整備されています。ガーデンは、テレビ番組の園芸講座で講師を務めたガーデナーの福森久雄さんが監修し、季節に合わせてさまざまな花が咲き乱れます。傾斜の角度が違うので、ガーデンから見るブドウ畑やワイナリーの風景が変わるそうです。

 1階にはホテルも併設されており、ワインを軸にした複合施設になっています。敷地は約33ヘクタール。ワイナリー後背の森にも散策路があります。自然に囲まれて過ごすことができ、四季を感じてパワーチャージできそうです。

住所/仁木町旭台148-1
電話/0135・32・3801
〈山﨑編集長のワイナリー巡り〉⑨NIKI Hills Winery(仁木町)2人の女性醸造家が生み出すエレガントで香り高いワイン

余市の希少ワイン3種を繊細な京会席とともに 余市駅前「かくと徳島屋」

かくと徳島屋の入り口
JR余市駅の正面にあります

 本日の夕食と宿は、余市駅前にある「かくと徳島屋」です。ここでは、入手困難な「ドメーヌ・タカヒコ ナナツモリ」と「ドメーヌ・アツシ・スズキ パストゥグラン」「ドメーヌ・モン ドングリ」の3種類各45ミリずつのテイスティングセットを飲むことができます。料理は京都の高級料亭「本家たん熊本店」で修行をしたご主人の当宮弘晃さんが「Vin de 時候膳」と名付けたコースで提供してくれます。

ドメーヌ・モンのドングリ2021とお造りなど

 最初はドングリ2021からスタート。これには、「生雲丹胡麻豆腐」と「菊菜と栗麩の白和え」、お造りを合わせます。本来は1品ずつ提供されますが、一緒に出してもらいました。白和えを一口の後にワインを飲むと、菊菜の苦みとワインが出会って、しみじみおいしい苦みになります。お造りはブリとボタンエビ、南蛮エビ、ヒラメ、エンガワも付いていました。しょうゆはワインに合うように、だししょうゆを出してくれました。だしのまろやかさとワインが良く合い、塩をちょっと付けても、またおいしさが引き立ちます。驚いたのは、ウニです。最初は「合うのかな?」と疑問を感じましたが、これがぴったり。ウニの磯の香りがワインでまろやかになります。女将の益美さんが「少しだけ太白ごま油をかけていて、この油がウニとワインをまとめています」と教えてくれました。

ドメーヌ・アツシ・スズキ パストゥグラン2020とハッカク、フグ

 次はパストゥグラン2020がやってきました。ピノ・ノワールとツヴァイゲルトを自然酵母で発酵させており、繊細で優しい味わいです。「河豚の唐揚げ 焼白子 鉄皮 ポン酢」と「八角焼 染めおろし」が運ばれてきます。フグは余市産で、白子と身はマフグ、皮はトラフグです。白子のふんわり感とからあげにした身の弾力、鉄皮のコリコリした食感が楽しく、同じポン酢がかかっているのに、まったく違う料理のように感じます。ワインの力強い味わいは脂ののったハッカクに負けず、でもじゃまをせず、手は身をほぐすのとグラスに伸ばすので大忙しです。

ドメーヌ・タカヒコ ナナツモリ2020とかすべの揚げ出し

 最後にナナツモリ2020が注がれました。「かすべの揚げ出し」と「新生姜御飯」「油子(アイナメ)土瓶蒸し」と一緒に味わいます。揚げ出しには素揚げしたゴボウやズッキーニなどが添えられ、野菜の素材の味も楽しめます。土瓶蒸しはまずおちょこにだしを注いで味わい、途中でスダチを絞るとさわやかさが加わり、印象が変わります。

 ワインの味が、揚げ出しや土瓶蒸しのだしに寄り添います。揚げ出しは、揚げ油のこくが出ただしなのに対し、土瓶蒸しはアブラコの上品な白身から出た透明なさらりとしただし。風味は違いますが、どちらのだしにも良く合います。さすが、「だし感のあるワイン」と呼ばれるドメーヌ・タカヒコです。ご飯は新ショウガの香りがさわやかで、もちもち。上に青のりがかかっていたのですが、ワインと合わせるとなぜか木の芽のようなさわやかな香りを感じます。最後に、わらびもちでコースを締めくくります。

来年100年を迎える「かくと徳島屋」のダイニング

 徳島屋は1924年(大正13年)創業、来年100年を迎えます。4代目の武さんは京都で修行後、余市に戻ってきて今年で29年になるそうです。最初から最後まで、「おいしい」の連続です。料理はひとつひとつ、手をかけて丁寧に作られた印象で、「地元の漁師さんから仕入れた新鮮な海産物を使っている」とはいうものの、素材の良さの中に繊細さが感じられます。ワインのテイスティングセットは3千円で、料理を合わせると1人6千円です。

かくと徳島屋の朝ご飯。いろいろなおかずをちょこちょこ食べることができます

 翌朝、前日と同じ部屋でさわやかに朝ご飯です。「日本の正しい朝ご飯」と題名を付けたいくらいの正統派の和食です。ピカピカな白いご飯と豚汁、ぱりっと焼かれたサバ、ほんのり温かくタマネギの甘みがおいしい天ぷらかまぼこ、ピーマンとのりの和え物などがずらりと並びます。さあ、2日目も元気に楽しみます。

住所/余市町黒川町8-12
電話/0135・22・6369
編集長のご褒美女子旅 2023 vol.2道央 余市・仁木編㊦ウイスキー&フードとお土産ワイン探しを楽しむ
ワインの産地・北海道仁木町の「ワイン神社」を訪ねて〈山﨑編集長☆発〉
仁木町を訪れる8つの理由㊤豊かな自然×家族で楽しい農村公園×ユニークな宿泊施設

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小川郁子編集長
小川郁子編集長

 苫小牧生まれ、札幌育ち。ビール、ワイン、日本酒、お酒全般、控えめにいって好きです。食べ物の好き嫌いもほとんどありませんが、ウナギやハモ、アナゴなどニョロっとしたものは苦手です。1996年に北海道新聞入社後は、道内各地や東京で1次産業や政治、行政などを担当しました。2023年5月からTripEat北海道編集長。

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