【滝川】しょうゆベースの甘辛のタレでからめた豚肉をご飯にのせた「チャップ丼」を滝川名物にしたとして知られる市内の食堂「高田屋」(栄町3)が8月、開店から70周年を迎える。チャップ丼は約50年前に誕生。市民や観光客からも人気だ。2代目店主の高田資久(たかひさ)さん(74)は「まだ長く続けたい」と意気込む。だが「後継ぎはいないし、出前の車の運転に不安が出たら辞め時かな」とも感じている。
創業は1953年。店の壁に大きく掲げられた「高田屋」の看板は「雪の日でも目立つように」と先代の父で、2010年に97歳で亡くなった喜四郎(きしろう)さんのアイデアだ。
チャップ丼の“原型”は資久さんの高校時代の弁当。豚肉に焼き鳥のタレを絡めた豚丼として持たせてくれた。タレの調味料にはケチャップは使っておらず、割合などレシピは門外不出。「命の次に大事な物」ときっぱり言う。
71年に喜四郎さんがメニューに加えた時はチャップ丼の売れ行きが良くなく、73年に資久さんに店主が代わっても「チップ丼」と間違われるほどだった。しかし2000年ごろから口コミなどで浸透し、滝川の味の一つに。市内でグライダーなどを楽しむ国内外の人も食堂ののれんをくぐるようになったという。
だがコロナ禍で客足は遠のき、営業時間は2時間短い午後8時までに。売り上げも減った。それでも乗り越えられたのは地元の人が支えてくれたからだ。「『おいしかった』と言われるとやっぱりうれしい。閉店時刻を戻せる体力はないけれど」と話す。
今でも店には1日に約80人の客と10件以上の出前の注文がある。高田さんは「店主を継いで50年。私の代でおしまいかな」とこぼす。しかし「父は85歳まで自転車で出前をしていた。父のように年を取っても元気に働きたい」。滝川の味を少しでも長く守るつもりだ。 (宇田川創良)
(北海道新聞2023年7月27日掲載)