【鶴居】村内で羊の牧場を経営している30代の夫妻がいる。ウエ・マックシミリアンさん(39)と黒沢松美さん(36)。フランスでの修業を経て牧場を開業し、今夏、羊乳ヨーグルトの製造、販売を始めた。夫妻は「羊乳の魅力を広められれば」と、今後も新たな商品を作る計画だ。
釧路総合振興局と根室振興局によると、釧路・根室管内の羊牧場の生産品目は羊肉が多く、羊乳製品は珍しいという。
2人は2007年、長野県内の農業ボランティアで活動を共にしたのをきっかけに交際に発展。5年後にウエさんの母国フランスに渡り、結婚した。酪農が基幹産業の村内出身で、もともと動物に親しんでいた黒沢さん。農家を志し、アルプス山脈の麓にある羊農家で、羊の飼育方法や乳製品の作り方を学んだ。
羊乳はタンパク質や乳脂肪分が豊富で、甘みのある濃厚な味わいが特徴だ。2人は羊乳の魅力を日本で広めようと21年、村に移住。使われていない旧牛舎を知人から借り、昨年4月、羊牧場「フカフカ谷牧舎」をオープンした。乳用種「フライスランド」を17頭飼育している。
今年7月下旬からは、プレーンヨーグルト「鶴居村の羊グルト」(90ミリリットル、340円)を販売。グラフィックデザイナーであるウエさんが外装を、黒沢さんがヨーグルトの開発を担当した。村の特産品販売施設「鶴居たんちょうプラザ つるぼーの家」では、販売初日に並んだ33個が1日余りで売り切れた。つるぼーの家によると、羊乳製品の珍しさとその甘さが人気を集めたという。
ヨーグルトは、村内のレストラン「ハートンツリー」で手作りしている。今秋に羊乳チーズ、来年には羊乳アイスクリームを販売する。安定生産に向けて、牧場敷地内に羊乳製品の加工施設を設ける考え。「少量でも、質の高さを追求していきたい」と意気込む。
村は新規就農者向けの補助金で2人の牧場経営を支援しており、新たな特産品として羊乳製品に期待感を示す。村産業振興課は「将来的にはふるさと納税の返礼品に加えたい」としている。(松井崇)
(北海道新聞2023年8月24日掲載)
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