【斜里】ウナベツ温泉として親しまれ、2019年に休業した旧ウナベツ自然休養村管理センター(峰浜)が、宿泊施設「雪霞(せっか)SHIRETOKO」に生まれ変わり、10月6日にプレオープンする。地場産食材を売りにした食事と天然温泉に加え、宿泊客の観光プランもサポートする「完結型」の宿泊施設を目指す。運営会社リナソンズ(旭川)の代表取締役藤本創子(そうこ)さん(58)は「ぜひ泊まって知床の魅力を満喫してほしい」と話す。
藤本さんは、18年から2年間、旭川市内で料理やサービスに定評のある民泊を経営していた。リソナンズは、藤本さんが今回の開業のために21年10月に設立した会社で、経営には長男雄太さん(25)と中国人の王子男(ワンズーナン)さん(40)も携わる。
藤本さんは、町が公募型プロポーザル(事業提案)で同センターの売却先を探していたのに応じ、20年3月に約400万円で購入した。東京のリノベーション会社「ハウストラッド」の協力で大改装した。
内装は1900年代中頃の北欧のイメージでデザインし、客室は間取りを広げて洋室1室、和室4室に一新させた。
中長期で滞在する家族連れや団体をターゲットに、宿泊客それぞれに世話人が付く「コンシェルジュホテル」の形態をとる。世話人は食事や入浴などの宿泊業務に加え、観光案内までサポートする。
藤本さんの右腕となる王さんは北京出身で、旅行で創子さんの民泊を訪れ、ご飯支度や雪かきなどの家庭生活を一緒に体験できる創子さんの民泊スタイルに深く共感し、香港の大学教員を辞めてやってきた。日本語は独学したという。
王さんは「創子さんから日本のおもてなしを学んだ。新天地で、その素晴らしさを多くの人に伝えたい」と意欲満々だ。
宿泊客へのサービスとして、隣接するウナベツスキー場でのスキー体験や、地元農家と連携した農業体験なども案内する予定。雄太さんは「地元の方々との関わりが観光客にとって最大の財産になる。知床の『ひと』の魅力も感じてもらえる場所にしたい」と語る。
同時に5組まで受け入れ可能だが、11月ごろまでをプレオープン期間とし、原則2組まで受け入れる。
開業に向けて実施したクラウドファンディング協力者に、「スイート」から「スタンダード」まで三つのプランをおおむね1泊1人当たり2万円台で設定しており、これをもとに正式オープン後の料金設定を考えるという。問い合わせは藤本雄太さん、電話090・9787・6789へ。(佐藤海晟)
(北海道新聞2023年9月21日掲載)