世界的に権威がある飲食店のガイドブック「ミシュランガイド」で一つ星を獲得した2店が函館市柏木町の住宅街に軒を連ね、食通らの間で話題となっている。10年前から営業するフランス料理店の隣に今春、森町にあったすし店が移転オープン。両店主はコラボイベントの開催など、今後の連携に意欲を見せている。
2店は閑静な住宅街を貫く市道の通称「柏松(はくしょう)通り」に立ち並ぶ。フランス料理店「ロワゾー・パー・マツナガ」を営む山口県防府市出身の松永和之さん(47)は2007年にフランスに渡り、三つ星レストランなどで6年間修業。本州の高級ホテルからの誘いもあったというが「道内ではまだなじみの薄いフレンチを広めたい」と、妻の地元でもある函館で独立。17年にミシュラン一つ星を獲得した。
今年3月、その隣に店を構えたすし店「鮨(すし) おおね田」は12、17年に一つ星を獲得。店主の大根田(おおねだ)茂樹さん(53)は故郷の森町で14年間店を続けていたが、コロナ禍を契機に函館への移転を決意。松永さんと共通の知人の紹介で現在地に店を建てることになった。最初は「有名店の隣が自分でいいのかというプレッシャーはあった」というが、「ふらっと入りにくい住宅街なので、お客さまが最初からうちを目指して来てもらえたのを実感できる」と笑顔を見せる。
地方都市では珍しい、軒を連ねるミシュラン店。ジャンルは違えど、質の高い食事を求める客層など共通する部分もあり、松永さんの店の常連が大根田さんの店に足を運ぶといった相乗効果も生まれている。2店は必要に応じ、食材の仕入れ先を紹介し合うことも約束するなど、連携を深めており、松永さんは「大根田さんのお店でうちの肉料理を出してみるのも面白い。この通りが多くの人に面白いと思ってもらえるようになれば」と力を込める。(中橋邦仁)
(北海道新聞2023年11月8日掲載)