【江別】本場イタリアで4年修業した日高管内新冠町出身のイタリア料理シェフ新田裕也さん(37)が11日、江別市の住宅街にイタリア料理店「nikap(ニカㇷ゚)」(大麻新町7)を開店。新冠の語源にちなんで店名を付け、妻那々子さん(33)の出身地に店を構えた。新田さんは「イタリア料理には郷土を大事にする文化がある。料理を通して、新冠も江別も盛り上げていきたい」と意気込む。
新田さんは新冠町美宇の酪農家の家に生まれた。中学まで新冠で過ごし、静内高を経て、札幌市の専門学校で調理を学んだ。「もともと料理が好きだった」という新田さんは卒業後、東京や札幌のイタリアンレストランで5年近く修業。その後、24歳でイタリアに渡り、北部のクーネオ、リミニなどのレストラン3店で4年間腕を磨いた。「料理の技術はもちろん、イタリア人の地元愛や家族を大事にする文化を学んだのは自分の生き方にも大きく影響している」
2015年に帰国し、札幌市中央区の「テアトロ・ディ・マッサ」など2店でシェフとして8年近く腕を振るった。20代のころから「いつか自分の店を持ちたい」と思っていたことから、那々子さんの地元で3年前から自宅を構える江別市での独立を決意した。
店では、ジャガイモで作る「ニョッキ」や卵黄を多く練り込む「タリオリーニ」など自家製生パスタをメインに提供する。いずれも新田さんが本場イタリアで覚えた得意メニューだ。パスタ用の小麦は江別産を仕入れ、他の食材も故郷の新冠産を含めできるだけ道産を使っていきたいという。
店名はアイヌ語でハルニレなどの木の皮を意味する「ニカㇷ゚」にちなんだ。新冠の語源にもなったこの言葉を通し、新田さんは、アイヌ文化では木の皮を衣装の素材に用いるなど多くの利用法があることを知った。新田さんは「素材一つから多様な方法を考えるのは、イタリア料理にも通じる話。故郷を大切にする思いも込めた」と店の由来について話す。
営業時間はランチが午前11時半~午後2時半、ディナーは午後5時半~10時。月曜定休(12月までは不定休)。問い合わせはnikap、電話011・398・7704へ(11日開通)。 (石井純太)
(北海道新聞2023年11月9日掲載)