【浦河】町内の軽種馬牧場で働く騎乗員が、町中心部のネパールカレーの店を買い取って11月にリニューアルオープンさせた。経営者との「二刀流」に挑戦するのは、三嶋牧場(町西舎)の加藤太生(たいき)さん(23)。軽種馬牧場経営の夢をかなえるためで、「馬や経営について少しずつ学んで成長したい」と意気込んでいる。
埼玉県出身の加藤さんは、中学時代に地元の乗馬クラブで馬術を習い始めた。高校卒業後は千葉県内の乗馬学校に2年間通い、「馬の本場である北海道で仕事をしたい」と、2021年に三嶋牧場に就職した。
加藤さんは軽種馬の育成牧場と乗馬クラブを経営する夢を持つ。「実現に向け、小さな事業から始めて経営のノウハウを学ぼう」と考え、昨年、まず食品販売サイトを立ち上げた。自ら開発したお茶の加工品や飲食店が手掛ける食品を販売している。レストラン経営も夢に近づくための布石だ。
買い取ったのは、「ダービー」の店名だった町大通2のレストラン。町内のインド人も多く訪れるネパールカレーのチェーン店だ。牧場でインド人の同僚と接する機会が多く、「彼らにも喜んでもらえるようなビジネスを手掛けたい」と、苫小牧のチェーン本部と交渉を続け、10月に店舗を買い取った。資金は貯金や資産運用で工面したという。
旧店のネパール人スタッフは継続雇用し、新たにインド人も採用した。町内に住むインド人の多くの出身地がラジャスタン州であることから、新店名は同州の旧王朝名「マールワール」とした。人気のナン付きのカレー(千円から)といった既存のメニューを残しつつインドの家庭料理やスイーツ、日本人に人気のスープカレーなど種類を増やした。「日本人と外国人の交流が活発になるような店を目指す」と加藤さん。
11月1日の開店後は、午前4時半から牧場で馬の調教を行い、昼休憩や仕事終わりの夕方から店で接客や調理の手伝いに汗を流す日々だ。日高軽種馬農協は「騎乗員による副業の例は聞いたことがなく、大変珍しい」と言い、勤務先の牧場も二刀流の活動に理解を示しているという。
加藤さんは「両立は大変だが、夢をかなえるために自分で選んだ道。失敗も勉強だと考えて、夢の軽種馬牧場の経営に向け、やりたいと思ったことにはどんどん挑戦したい」と話している。
営業時間は午前11時~午後3時、午後5時~9時(金、土曜は午後11時まで)。不定休。問い合わせは同店、電話0146・22・7717へ。(和田樹)
(北海道新聞2023年11月23日掲載)