函館市を代表する観光名所で、ともに眺望を売りにする五稜郭タワーと函館山ロープウェイが、頂上の展望台でしか買えない限定土産の開発に力を入れている。地元企業とのコラボ商品や食品、雑貨などジャンルを超えた豊富な品ぞろえが特徴で、エレベーターやロープウエーなどの料金を払って訪れた場所でしか入手できない「レア感」が観光客の心をとらえている。
高さ約90メートルから星形の城郭を見渡す五稜郭タワー。1階にも売店はあるが、同社によると、展望台でしか販売していないお土産が10種類ほどあるという。
特徴の一つが、景観と歴史の組み合わせだ。9月下旬に発売した新商品「マルチトートバッグ」は片面に五稜郭とタワー、反対の面には五稜郭を舞台にした箱館戦争を戦った土方歳三のイラストをあしらった。商品を紹介する五稜郭タワー販売部の公式X(旧ツイッター)の投稿には1万件超のアクセスがあり「ガチでほしい」などのコメントが寄せられた。
ファッションブランド「豊天(ぶーてん)商店」とコラボした靴下やポーチには、五稜郭のイラストと「函館氷」「品質良好」の文字をデザイン。明治から昭和にかけ五稜郭の堀に張った氷を切り出して販売し、宮内庁御用達になるほどの評価を受けたという史実にちなんだ。
2006年に解体された旧タワー時代からのロングセラーが「土方血しぶきTシャツ」。シャツの表側には箱館戦争で戦死したとされる土方の辞世の句を荒々しい字体で書きつづり、背面には血しぶきをデザイン。女性を中心に20年以上前から、根強い人気を誇るという。
販売部の鬼頭幸光部長は「ホテルや外食と比べ、お土産への出費は二の次と考えられがち。生き残るには、『ここでしか買えない』という付加価値で差別化を進めていかないと」と力を込める。タワーでは来春までに展望台限定グッズの種類を現在の2倍に増やす予定という。
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標高334メートルの函館山ロープウェイ山頂ショップにも、十数種類の限定土産が並ぶが、目を引くのは「一つで二度楽しめる」タイプの商品だ。
ハート形のクランチチョコを箱詰めした「函館山ハート伝説」は、函館山から見える夜景の中に隠れたカタカナの「ハート」の文字を見つけると幸せになれるという逸話が題材。箱を開けるとパッケージの内側に「答え」が載っている。コロナ禍前に売り切れたものの、観光客回復を受け、9月に内容をリニューアルして再発売した。
市内で定番の土産品で、函館の老舗レストラン「五島軒」の箱入りレトルトカレーも山頂限定バージョンが存在する。パッケージには函館山からの夜景や雪景色をデザイン。中身のルーも本店では食べられないラム肉カレーとなっていて、希少価値の高さを売りにする。函館山夜景のクリアファイルは、中に用紙をはさむと昼の景色に変化するというアイデアグッズだ。
商事部の近江谷弘則課長代理は「お土産を通じて函館山を記憶にとどめてもらうだけでなく、楽しんでもらいたいという思いもある」。今後についても「今までにないジャンルの新商品を作れたら」と意欲を見せる。(中橋邦仁)
(北海道新聞2023年11月29日掲載)