【岩見沢】山に囲まれ、自然豊かな岩見沢市南東部の毛陽地区に、「フランスガモ」と呼ばれるバルバリー種のカモ肉を生産・販売する「北海道ウイングファーム」(岩見沢、小川弘康社長)の農場がある。フランスガモの生産は全国でも珍しく、肉はくせがなく滑らかな口溶けが特徴。寒さに弱い品種だが、手塩に掛けて育て、2022年の販売開始以来、道内外の料理人から評価され、徐々に販路を広げている。同社はフランスガモを地域の特産品にしていきたい考えで「多くの人に一度食べてもらいたい」と話す。
「気性はおとなしく、飼育しやすい方だと思う。ただ寒さに弱いので、温度管理には気を配っている」。北海道ウイングファームの農場で、従業員の笹花駿さん(31)が説明する。ビニールハウス2棟の内部に小屋を建て、平飼いで育てている。足元に敷き詰められているもみ殻は週2回の頻度で全て入れ替えるとともに、健康のためにカモをハウス内で歩かせている。
*国内で生産珍しく
フランスガモはフランスで改良されたカモの品種。成鳥は体長1メートルほどで、日本で一般的なアイガモと比べ2倍ほどの大きさ。国内では青森県など東北地方の一部農家が生産している。
北海道ウイングファームは19年の設立で、札幌市の人材派遣会社「アスクゲート」の子会社。アスクゲートの斉藤三寛社長が秋田県の生産者を視察した際に、フランスガモに興味を持ったのが生産のきっかけだ。20羽のひなを譲り受け、広々とした地域で育てようと知人が営農をやめた岩見沢市内の土地を買い取り、事業を始めた。
道内で育てるにあたり、寒さ対策に苦労。冬場はストーブでハウス内の温度を保ち、特に寒さに弱いひなの生育には、こたつを活用している。餌は専用の配合飼料に、長沼町のながぬま温泉が源泉豆腐を作る際にできるおから、美唄産の玄米をブレンドし付加価値を高めている。生後90日前後で出荷し、今年は約4千羽の出荷を見込む。
*道内外50店に卸す
カモが卵を産むのは5~10月ごろ。このため、成長したカモの出荷時期は夏から冬までが中心となる。農場内に加工施設があり、ロースやもも、砂肝、ハツなどの部位に分けて真空パックに詰める。「肉はカモ特有のくせがなく、いろいろな料理に合わせやすい。脂の融点が低いため、口溶けは滑らか」と笹花さん。昨年9月から販売を始め、一から販路を開拓した。これまで道内外のレストランや居酒屋、そば店など約50店に卸してきた。
農場と同じ岩見沢市毛陽地区にある温泉宿泊施設「ログホテル メープルロッジ」では、地元産の新食材として販売開始直後からフランスガモに注目。施設内のレストランで、季節によって異なるメニューにカモ肉を取り入れている。今秋は、時間をかけて煮込んだもも肉を型に詰めた「テリーヌ」をコース料理の前菜として提供。山本剛史料理長(40)は「肉は身がしまっていて味が濃い。レバーをペースト状にするなど、内臓もいろいろな料理に使える」と話す。
札幌市の「ビストロ清水亭」ではローストや、低温の油でじっくりと煮た「コンフィ」などの料理に使用。「食べ応えがあり、客からの評判もいい」とシェフの清水正信さん(64)。
*年8千羽出荷目標
飲食店に卸しているだけでなく、北海道ウイングファームの公式ホームページや「食べチョク」などの通販サイト、道の駅マオイの丘公園(長沼町)でも販売している。同社は今後、ハウスの棟数を2倍に増やし、年間出荷数を8千羽にまで増やしていきたい考え。小川社長は「家庭で簡単な調理をしてもおいしく味わえる。多くの人に知ってもらい、岩見沢の特産品にしていきたい」と意気込む。
商品は焼き肉用ロース(200グラム、1944円)、ささみ(300グラム、1890円)などのほか、カモ肉400グラムやスープなどが入った鍋セット(6480円)がある。平日午前8時~午後5時には、農場(岩見沢市毛陽町72の2)で直売も可能。事前連絡が必要で、問い合わせは同社、電話0126・35・5952へ。(横田望)
(北海道新聞2023年12月6日掲載)