函館市の景観形成指定建築物となっている旧遠藤吉平商店(大町9)を、ホテルや飲食店の企画や運営を行う「Staple(ステイプル)」(広島県尾道市)が買い取り、来年1月10日に1棟貸しの宿「Portside Inn Hakodate(ポートサイドインハコダテ)」としてオープンさせる。アーチ窓など建築当時の意匠を生かした上でリノベーションし、異国情緒漂う西部地区の滞在拠点として観光客らにアピールする考えだ。
関係者によると、回船業者だった旧遠藤吉平商店は1885年(明治18年)以前に建てられたとされる。2階建てれんが造りで、延べ床面積は112平方メートル。外観はれんが壁にしっくいを塗り石造り風に見せているほか、1階の3連アーチの装飾、2階のアーチ窓、瓦屋根といった和洋折衷のデザインが建築時のまま残っている。数年前にカフェが撤退してからは空き物件となっていた。
ステイプルは尾道と東京で、今回と同じように歴史的建造物をリノベーションした小規模ホテルを経営するが1棟貸しは初めてという。1階はキッチンのあるリビングでソファや冷蔵庫、ワインセラーを配置。2階にはベッドや浴室を備える。れんが壁や梁(はり)をそのまま生かすなど、内装にもこだわった。
宿泊費は人数や時期に応じて1泊7万~14万円ほど。スタッフは置かず、予約や決済をオンラインで行う。予約の無い日にはギャラリーやイベントスペースとして市民らに貸し出す考え。
運営を担う同社現地法人「Staple函館」(函館)取締役の園部優樹さん(27)は「西部地区は歴史がありながら、新しいことをしたい人にも協力的な環境。地域にも開かれた建物にしたい」と話している。
同社は今後も西部地区を中心に、古民家などを活用した宿泊施設の展開を進める考え。
ポートサイドインハコダテのウェブサイトは、https://www.portside-inn-hakodate.com
(中橋邦仁)
(北海道新聞2023年12月25日掲載)