エイの一種であるカスベは、ヒレ部分の皮をむいた状態で、薄ピンク色の切り身になって道内各地のスーパーなどに流通している。道民には煮付けや煮こごりなどとしておなじみの食材。産地を訪ねて、おいしい食べ方を聞いた。
道内でよく食べられているのはガンギエイ科のメガネカスベで、通称「マカスベ」と呼ばれる。冬の寒い時季に後志管内から宗谷管内の日本海側を中心に多く水揚げされる。身は淡泊で軟らかく、軟骨も食べることができ、コリコリとした食感が特長だ。
留萌管内羽幌町の漁師、逢坂春男さん(69)の妻で夏季のみ営業する「浜のかあちゃん食堂」の店主、幸子(さちこ)さん(65)は「カスベのぬた」=末尾にレシピ=などを紹介してくれた。
まず、2センチ角に切ったカスベを一晩酢につけておく。幸子さんは、通常よりも酸度の高い酢を量を調整して使っている。
酢みそは、すり鉢に三温糖、卵黄、酢、みそを入れて混ぜ合わせて作る。「三温糖を使うとよりまろやかな味になりますよ」。斜め薄切りにした長ネギと水気を切ったカスベを加えて絡めたら完成。「カスベの『ほっぺ(頰肉)』を使っても軟らかくておいしいです」
カスベの身が締まってほどよく弾力があり、酢みそが利いてさっぱりとした味で食べやすい。
唐揚げも定番の一品。しょうゆや塩で下味を付けて1時間おき、片栗粉をまぶして170度の米油で裏表を返しながらきつね色になるまで揚げる。
幸子さんお手製のしょうゆ味は、みりん、ショウガ、ニンニクも加えて下味を付ける。かりっとしていて、身の一筋一筋が軟らかくうまみがあり、ごはんが進みそうな味だ。
塩コショウ味にしたほっぺは、高めの温度で揚げる。太い骨が1本あるため、骨付きチキンのようにして食べる。脂身はないのにジューシーな味わいが楽しめる。
さらに、幸子さんは皮付きのまま料理することも多い。「煮付けは皮をむかない方が身が締まります」。幸子さんの店では営業中、日替わり定食で皮付きの煮付けが食べられる。
カスベは水揚げから時間がたつとアンモニア臭がして味が落ちるため、干物に加工することも。逆に、新鮮なものを刺し身として提供する店もある。味は白身魚のようにあっさりとしているそうだ。(神田幸)
*刺し網漁 多い時は150匹*羽幌
北るもい漁協の本所(留萌管内羽幌町)では、カスベ漁は通常午前1時に出港し、同管内遠別町や初山別村などの沖合約20キロ、水深70~90メートルの漁場で刺し網漁を行っている。大きいカスベは体長1.5メートル以上。多い時には、一度に約150匹(約800キロ)が水揚げされる。
午前8時に帰港すると、付加価値を付けるため、カスベの大半を皮むきする。羽幌町の逢坂幸子さんは「皮むきはゆるくない。腱鞘(けんしょう)炎になったこともある」と振り返る。
2023年の同所の漁獲量は26トン。約8割を札幌へ出荷する。同漁協販売部長の東谷(あずまや)満也さん(54)は「飲食店でしか食べないという人も、料理しやすいのでもっと家庭で気軽に作ってみてほしい」と語る。(神田幸)
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■カスベのぬた
◇材料(2人分) カスベ400グラム、酢(酸度の高いもの)大さじ3、A(みそ80グラム、三温糖60グラム、卵黄1個、酢大さじ3)、長ネギ1/2本
◇作り方
①2センチ角に切ったカスベに酢をかけて、一晩つけておく。
②重しをのせるか、手で絞って水気を切る。
③Aをすり鉢に入れて、すりこぎで混ぜ合わせる。
④斜め薄切りにした長ネギとカスベを入れて交ぜる。
(北海道新聞2024年1月18日掲載)
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