海外からの観光客に、スキーやスノーボード、雪遊びが楽しめるスノーリゾートシティ・札幌の冬の魅力を味わってもらおうと、地域創生事業を手がけるANAあきんど札幌支店が、日本在住で観光に携わる外国人らを対象に、モニターツアーを実施しました。キャビンアテンダント(CA)の案内による市内観光や、夜の観光を楽しむ「ナイトタイムエコノミー」も組み込みました。札幌の冬の楽しみ方として、参考にしてみてください。
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札幌のパウダースノーを体験 スキー初心者もOK
タイや香港、韓国、イタリア出身で、現在は東京や岩手など道外で観光関連会社に勤務したり、地域の情報発信をしたりしている男女6人が参加し、1月30日~31日に実施しました。
初日は、札幌国際スキー場で雪遊びとスキーに挑戦。午前11時ごろ、札幌の中心部をジャンボタクシーで出発し、昼ごろスキー場に到着。まずは、スキー場センターハウスの2階にあるカフェテリア「スカーレル」で腹ごしらえです。予約が必要なゲレンデに面した有料スペースに陣取ります。エビフライや唐揚げ、デミグラスソースのかかったケチャップライスなどをワンプレートに盛り合わせた「お子様ランチ」ならぬ「大人様ランチ」やオムハヤシ、オムカレーなどをそれぞれ注文しました。
参加者のほとんどが、スキー初体験。ウェアやスキー、スキーブーツなど一式すべてレンタルできるので、用具を持っていなくても手ぶらで体験できます。固いスキーブーツをはくのに四苦八苦しながら、なんとかゲレンデへ。
まずは、雪の感触を楽しもうとそり滑りをしてみます。なだらかな斜面を登り、プラスチックのそりで下りるだけですが、「スピード感がある」「迫力満点」と大喜び。バランスを崩してそりが横転してしまった参加者もおり、笑い声や歓声が絶えません。
ゴンドラで山頂に登ってみます。15分ほどで山頂に到着。この日は天候が良く、ゴンドラからは石狩湾や小樽港を一望できました。山頂の積雪は230センチほど。参加者は雪の深さに驚きながら、さらさらのパウダースノーと眺望を楽しみました。
ゴンドラでふもとに戻り、スキーに挑戦。インストラクターが1人、付いてくれました。まず片足だけスキーを装着し、スキーを付けていない片足でこぎ、感触を確認しながら周囲を歩きます。少し慣れたら両足にスキーをはき、横向きにゆるい斜面を登り、滑り降りてみます。バランスを崩してよろめいたり、転んだりしながらも、1時間ほどでなんとか数回、斜面を滑ることができるようになりました。
一方、参加者の中でタイ出身の二階堂パサナさんはスノーボード歴6年。山頂には「SKSインターナショナルカフェ」があります。パサナさんはソフトクリームを注文、ゲレンデで写真を撮影。「寒くてソフトクリームが凍ってアイスクリームになっちゃった」と苦笑しました。スノーボードで滑降すると、途中にきれいな樹氷がありました。「さすが北海道。あちこち写真を撮らなくちゃならなくて、忙しい」とうれしい悲鳴を上げていました。
宿泊はオープン直後の「SAPPORO STREAM HOTEL」
スキーを終えて、札幌中心部に戻ります。この日は、すすきのにオープンしたばかりの「SAPPORO STREAM HOTEL」に宿泊です。同ホテルは複合施設「COCONO SUSUKINO」の7~18階、全436室で、うち16~17階はスイートとデラックスツイン、コンフォートツイン56室のプレミアムフロア、18階はプレミアムフロアの宿泊者専用のスパとラウンジになっています。
プレミアムクラスは37~91.5平方メートル。どの部屋も天井から床までの大きな窓があり、開放感があります。南側の部屋からはネオンがまたたくすすきのの夜景が、北側の部屋からは「ノルベサ」の観覧車、晴れた昼間には石狩湾の風力発電の風車も望めます。
内装は各部屋で異なりますが、シックで都会的な印象ながら、北海道の開拓にちなんで壁にレンガを使ったり、木のテーブルやいすが配され温かみが感じられます。すべての部屋にマーシャルのスピーカーを備え、一部の部屋にはレコードプレーヤーとレコードを設置、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
プレミアムクラス専用のスパは男女とも、お湯と水の浴槽、サウナがあり、大きな窓からは夜景や眺望を楽しめます。ラウンジでは朝食を提供するほか、午後3時から11時まで、生ビールや道産ワイン、クラフトビールの「ススキノエール」、コーヒー、ソフトドリンクのほか、ナッツやチョコレート、生ハム、チーズなどをフリーで用意しています。
同ホテルは、地域に根付く人やもの、文化に光を当てようと、市内のコーヒー店やフラワーショップ、セレクトショップなどと連携。客室に地元作家のクマのクラフト作品を置いたり、7階のショップ「HUB SHOP」で地元の工芸品を販売したりしています。
部屋に置いている歯ブラシの袋に「もったいない。歯を磨く前に夜パフェを食べていないなんて。」とデザインするなど、アメニティのパッケージで地元の文化や店舗を紹介。札幌愛にあふれています。
夕食はホテル7階にバー&グリル「Splish(スプリッシュ)」で。160席ある広々としたダイニングで、案内された角の席には大きな窓があり、すすきの交差点を見下ろすことができます。すすきののシンボルともいえる、ニッカウヰスキーのネオン看板「キング・オブ・ブレンダーズ」、通称「ひげのおじさん」も見えます。
前菜はタチのグラタンやワカサギのエスカベッシュ、北海道産の豚のレバーのペーストです。ホタテやサーモンの刺身、サラダなども出され、メーンは北島ワインポークのグリルです。道産食材を使った創作料理で、参加者は「おいしい」「北海道は食材が豊か」と喜んでいました。
陶芸に挑戦 ろくろで皿や茶碗を手作り
2日目は、日本の文化を体験してもらおうと、札幌市中央区大通西23丁目の「円山陶房」で、陶芸に挑戦です。電動ろくろを回し、皿やコップ、茶わんなど好きなものを1~2個、作ります。空気を抜く練りや、粘土に水を含ませる「土殺し」は工房の人が事前にしておいてくれるので、参加者は粘土で形を作って好みの釉薬を決めるだけ。工房の人が後日、素焼き、釉薬をかけ、本焼して送ってくれます。
参加者は恐る恐る粘土に触れ、足でペダルを踏んでろくろを回します。「キャー、ヌルヌルして手がくすぐったい」「気持ちいい」などと言いながら、縦に粘土を伸ばしていったり、茶わんの形を整えたりしていきます。工房の人から「優しく包む感じで伸ばして」「焼くと器の内側くらいの大きさに縮むので、大きめに作って」などとアドバイスを受けます。
途中で潰れてしまったり、穴が空いてしまったりする参加者もおり、悪戦苦闘。それでも1時間半ほどで完成させました。
ランチは札幌名物のラーメンを。狸小路5丁目の人気店「らーめん吉山商店」でそれぞれ、好きなものを選びます。「札幌はおいしいものだらけで、何を食べるか困っちゃう」と、楽しい悩みがあるようです。
着物で散策 神社参拝や茶道体験で日本文化に触れて
午後からは着物を着て過ごします。狸小路5丁目のレンタル着物ショップ「美月桜(みつきさくら)」を利用。肌じゅばんやたび、髪飾りやバッグ、帯締めなどの小物類、冬にはショールもレンタルできるので、手ぶらでOKです。まず、ずらりとかけられた着物の中から好みのものを選び、着付けてもらいます。ヘアメイクもプロがしてくれます。
着替えた後は、ANAのCA小林衣里さんの案内で、市内観光に出発です。まず、北海道神宮にやって来ました。鳥居の前で記念撮影後、境内へ。小林さんは「北海道の開拓・発展の守護神として、大国魂神(おおくにたまのかみ)と大那牟遅神(おおなむちのかみ)、少彦名神(すくなひこなのかみ)の開拓三神に加え、明治天皇の四柱がまつられています」と説明しました。
本殿で二礼二拍手一礼し、お参りした後、おみくじをひいたり、写真を撮り合ったりしました。途中、雪がちらちらと降り始めると、参加者はおおはしゃぎ。「きれい」「雰囲気あるね」と手で雪を受け止めて、喜んでいました。
次は、札幌市中央区南1条東1丁目の「お抹茶サロン wa no cocoro」で茶道の体験をします。表千家の茶道講師、鈴木志保里さんが指導してくれます。本来は、茶室に正座をしてお菓子をいただきますが、正座が苦手な人も多いので、お菓子はいす席で。この日は、「冬梅」と「おかめ」。鈴木さんは「お菓子で口の中が甘くなっているところにお茶を飲むと、お茶の味が引き立ちます」と説明します。
鈴木さんは「今日のお花は南天と椿。椿は一番格式の高い花です。掛け軸は、今年は辰年なので、昇り竜です」と説明します。茶室に移り、鈴木さんがお茶をたててくれました。「茶わんを2回、時計回りに45度ずつ回して飲みます」「最後はずずっと音を立てて飲み切ります」「飲み終わったら、口を付けたところを指でぬぐいます」などと飲み方を教えてくれます。
全員が一服した後、参加者がお茶をたてました。「この次はどうするんだったっけ」「先生みたいにきれいに泡が立たない」などと、試行錯誤しながら挑戦です。参加者は「先生がいれたお茶と自分のと、全然味が違う。先生のは甘くておいしい」と驚いていました。
お茶をいただいた後は、狸小路を散策し、着物の着用体験は終了です。参加者は「日本らしい気分も味わえた」「たくさんのひもで縛っているけど、慣れてきたら苦しくない。写真をたくさん撮れたし、楽しかった」と満足した様子でした。
まち歩きを案内したCAの小林さんは、乗務している時に乗客からおすすめの観光ポイントやおいしいお店はどこかと尋ねられることも多いそう。小林さんは「札幌はスキーなどのアクティビティを楽しめる自然も近く、都会の魅力も味わえます。今後も機会があれば、特に外国のお客さまに、ガイドブックに載っていない地域の魅力をお伝えしたいです」と話しました。
ジンギスカンやBAR、シメパフェ…。夜の札幌も満喫
夕食は、すすきののジンギスカン店「ふくすけ」(中央区南7条西4丁目)。同店はアスパラを食べて育つサフォーク「美唄産アスパラひつじ」を扱っています。ロースや赤身モモ、タンなどさまざまな部位を提供しているほか、豪州産もあり、食べ比べもできます。
最初は店員さんが焼いてくれます。片側に脂身のあるロースは、肉を縦にして、まず脂身から焼いていきます。焼き目がついたら、広げて両面を焼きます。店員さんは「最初は塩で食べ、たれには好みでニンニクや唐辛子を入れてください」と話します。
ジンギスカン鍋の上の方で肉を焼き、鍋のふちの辺りで落ちてきた脂で野菜を焼きます。野菜盛りの中のタマネギは札幌野菜の「札幌黄」。参加者はくさみがなく脂が甘いジンギスカンのおいしさに加え、野菜のおいしさにも驚いていました。
食事を終えたら、夜のすすきの散策に出発。開拓期には「薄野遊郭」、大正期には札幌第二公設廉売市場が置かれた場所に建つ「すすきのゼロ番地」(中央区南6条西4丁目)に行ってみます。1階には「すすきの市場」、地下には30店ほどの居酒屋や飲食店が入る飲食店街、2~5階は賃貸住宅の「すすきのアパート」となっています。参加者は「昭和の雰囲気」「意外に新しいお店もあるね」と話ながら、地下飲食店街を歩きました。
続いて南5条西3丁目の「元祖さっぽろラーメン横丁」へ。ずらりとラーメン店が並び、行列のできている店もあるのを見て、参加者は「こんなにたくさんラーメン屋さんが集まっているなんてびっくり」「次に札幌に来たら、この店に来たい」などと話していました。
次に一行は、「BAR一慶」(中央区南6条西4丁目)へ。ここは大泉洋さん主演の「探偵はバーにいる」シリーズの撮影地としても知られています。照明を落とした大人な雰囲気で、カウンターの向こうにはずらりとボトルが並びます。
お酒を飲めない人や、飲めても「本格的なバーは敷居が高い」と足を踏み入れるのをためらっていた人もおり、オーセンティックバー初体験の人も。バーテンダーが「当店にはメニューはありません。カクテルやお酒の名前で注文してもいいですし、どんなタイプのものを飲みたいか言ってもらえば、作りますよ」と話しかけてくれます。
「お酒が飲めないので、ノンアルでミルクを使った甘めのものを」と注文した人には、チョコとキャラメルの味のミルキーなモクテルが、「フルーツを使った、これを飲んでいたら男の人にモテそうなものを」と言った人には、あまおうの果汁とスパークリングワインを使ったきれいな色のカクテルが出されました。
1杯ずつ楽しんだ後は、札幌で定番となりつつある「シメパフェ」を楽しみましょう。「パフェ、珈琲、酒、佐藤」(中央区南2条西1丁目)に向かいます。
「苺と焦がしカスタード」や「抹茶と焙じ茶」、「塩キャラメルとピスタチオ」などのパフェ、コーヒーや紅茶のほか、ブランデーやワイン、梅酒などのお酒も充実しています。パフェグラスにゼリーを敷いたり、アイスを詰めたりしていく店員さんの作業を見るのも楽しい。できあがったら、さっそく撮影会です。
見た目がかわいらしいだけでなく、もちろん味もばっちり。甘いだけでなく、フレッシュな果物やコーヒームースのほろ苦さ、カシスムースのさわやかさなど、さまざまな味の変化があり、参加者は「こんな大きなパフェ、食べきれるかなと思ったけれど、ペロリでした」と満足していました。
同店オリジナルの「熊もなか」や人気のパフェの塩キャラメルとピスタチオの味をイメージした同店オリジナルのロッテのお菓子「シメパフェ小枝」など、お土産を買い込んだ参加者もいました。
スキーや雪遊び、日本の伝統文化、札幌の夜を楽しむ「ナイトタイムエコノミー」で、冬の札幌の魅力を詰め込んだツアーは、これで終了です。ツアーに参加した、ANAグループで旅行造成などを手がけるANAXのERI CHIUさん(香港出身、東京在住)は「レストランには外国語表記もあり、インバウンドに対応できていると感じました。食べ物もおいしいし、難しかったけれどスキーも楽しく、また挑戦したい。札幌観光はポテンシャルが高く、海外にもっと発信できると思いました」と感想を述べました。