【遠軽】町白滝上支湧別で乗馬クラブ「まきば北海道」を運営する本田正則さん(61)が今冬から、敷地内で飼育する秋田犬で犬ぞり体験のアクティビティを始めた。猟犬気質が強い秋田犬はそり引きにあまり向かないが、犬たちは1年がかりの訓練で列を組んで進めるように。スピードは出ないものの穏やかでかわいらしい姿に、観光客から「癒やされる」と評判だ。
「ゴー、ゴー」。一面銀世界の農道で、犬ぞりの乗り手を務める観光客が声を張り上げた。だが、前方の犬たちはどこ吹く風。「(犬をつないだロープを)もっと張って」。本田さんの指示が飛び、ロープをあれこれ操ると、そりはゆっくりと進みだした。
犬好きの本田さんは、乗馬クラブのほかにドッグラン付きの民泊も営む。5年前、秋田犬の温和な気質にほれ込み、今では10頭飼育。「白滝の冬を楽しめる遊びをもっと提供しようと、犬ぞりを思いついた」と話す。昨冬から動画などを参考に犬たちの訓練に励んできた。
近年、犬ぞりは冬のレジャーとして人気で、道内でも盛んにレースが開かれている。ただ、スピード重視の大会に出場するのは、犬ぞり専用か走るのが得意な犬種が大半。全国最大規模のレース「全国犬ぞり稚内大会」(稚内)の事務局によると、秋田犬の出場例はごくわずかという。
訓練の末、そりを引くようになった本田さんの犬たちも、雪原を疾走するというより、のんびり散策する感じ。猟犬らしくシカやウサギの足跡を見つけては臭いをかぎ、追跡を始めるなど「脱線」も多い。東京から訪れ、友人と体験した畑野雄紀さん(40)は「犬たちへの指示で汗だくになった。でも、かわいくて癒やされた」。本田さんは「スピードは出ないが、寄り道も含め大自然を楽しんでほしい」と話す。
犬ぞり体験は3月末までの予定。40分、2時間、3時間の3コースで料金は2万円から。融雪剤散布用農機具に乗って自ら運転する雪原散策もある。問い合わせは本田さん、電話090・6876・2975へ。(元井麻里子)
(北海道新聞2024年2月16日掲載)