【白糠】中国出身で町内在住の長谷川相業(シャンイエ)さん(40)が、白糠産食材を使った創作料理で親しまれている創業57年の町内の老舗「レストラン はまなす」(東2)を引き継ぐことが決まった。自分の店を持ちたい長谷川さんと、「地域住民らに愛された白糠の味を残したい」という店側の思いが一致した。長谷川さんは、はまなすの厨房(ちゅうぼう)に入り、「3代目」候補として修業中だ。釧根管内の飲食店で事業承継が行われるケースは珍しく、「後継者難に悩む事業者のモデルになれば」と期待が高まる。
はまなすのメニューは約130種類。天丼やうな丼など先代から続くメニューのほか、白糠産チーズをのせたスパゲティやシカ肉ハンバーグなど、地元食材を使った創作料理が人気で、昼の時間帯は連日、満席になるほどだ。
2代目オーナーとして約40年間店を切り盛りしてきた谷口修さん(70)は後継者がおらず、70歳の節目での廃業を決断。北海道事業承継・引き継ぎ支援センター(札幌)に相談し、昨年2月に事業承継サイトに情報を掲載し、後継者の募集を始めた。日本政策金融公庫主催のマッチングイベントにも参加してきた。
長谷川さんは、はまなすが後継者を募集していることを知り、手を挙げた。2015年ごろに札幌の中華料理店で働いた経験があり、飲食店を営む夢を持っていたが、経営のノウハウがなく、実現できずにいた。「事業承継の形なら経営できるかも」と応募。谷口さんらと面談を重ねて昨年12月、後継者に決まった。
長谷川さんは夫の英倖さんと札幌から白糠に移住。在宅勤務する英倖さんが経理などの事務作業を担当し、長谷川さんはシェフとして腕を振るう計画だ。現在は谷口さんから技術を学びながら、得意の春巻きをメニューとして提供しており、将来的にはエビチリやギョーザも加える予定。長谷川さんは「ますます人が集まる、明るい雰囲気の店にしていきたい」と抱負を語る。
道事業承継・引継ぎ支援センターによると、2023年度に道内で飲食店の事業承継が成約したのは、全体の成約数の約1割にとどまる。釧根管内では22年度、飲食業で35件程度の相談があった。同センターは「味や技術の承継はハードルが高く、成約は珍しい」と話す。谷口さんは「地域を大切にする姿勢が一致した。巡り会えてラッキー」と感謝している。 (三島七海)
(北海道新聞2024年2月20日掲載)
求む「白糠の味」後継者*町産食材料理店はまなす 全国公募*「熱い人に託す」仕入れ先も