【稚内】市内在住の会社員斉藤嘉仁さん(39)が、坂の下地区にある実家の裏山に自生するイタヤカエデから樹液を採取し、「最北のメープルシロップ」を作っている。豊かな香りと優しい甘さが特徴といい、シロップを使ったバターサンドの商品化も目指している。
海の向こうに利尻山を望む小高い山の上に、高さ4メートルほどのカエデが茂る。斉藤さんは慣れた手つきで根元にドリルで穴を開け、樹液を受ける専用の袋を取り付ける。「ここから1滴ずつ、透明な樹液が出てくるんです」と目を細める。
斉藤さんは実家の裏山に自生するカエデの木50本から樹液を採取し、シロップ作りまで手がけている。樹液採取は、芽吹き前の2月下旬から3月下旬の約1カ月。スノーシューを履き、2月ごろから専用の器具を1本ずつ木に取り付ける。樹液のあくを取ったり、こしたりしながら煮詰め、糖度を高めてシロップにする。
知人が作ったメープルシロップのおいしさにひかれ、2021年に実家の裏山を散策してみると、カエデの木が何十本も自生していることが分かった。インターネットで本場カナダなどの情報を調べ、見よう見まねで樹液の採取に挑戦した。
毎年少しずつ採取量が増え、23年には220リットルの樹液が採れた。シロップにして同僚や親戚らに配ると「コーヒーに入れたり、パンに塗ったり。いろんな味わい方ができると喜んでもらえた」と声を弾ませる。
カエデの木を増やそうと、種と苗木を合わせて約130本を育てている。樹液が出るまで成長するには、20年ほどかかると見込む。「子どもたちが大きくなるころ、ここがメープルの産地になるかもと思うとわくわくする。少しでも、この地域が元気になれば」と胸を膨らませる。
市萩見の焼き菓子店「おやつ屋やまぐち」に依頼し、4月ごろにシロップを使ったバターサンドを販売する計画。斉藤さんは「メープルの味をたくさんの人に知ってもらいたい」と話す。詳細、問い合わせは斉藤さんのインスタグラム(@maple_and_garlic)へ。 (菊池真理子)
(北海道新聞2024年3月1日掲載)
道産メープルシロップ 当別から*カナダ出身ギャニオンさん 町内に拠点*品質高めブランド化狙う