冬から春にかけて産卵を控えたニシンは脂が乗り、うまみが凝縮されている。主産地の小樽を訪れ、ホームパーティーで振る舞いたくなるような写真映えするレシピを地元の料理人に聞いた。
小樽市民の台所・南樽(なんたる)市場(新富町)には、銀色に輝くニシンがずらりと並んでいる。同市場内にある阿蘇鮮魚店の阿蘇裕文専務(38)は「その日にとれた新鮮なニシンは、ぜひ生で食べてほしい」と話す。小骨が多く生で食べづらいという人には、塩焼きや煮付けが好まれるという。
「調理法を工夫すると小骨が気になりにくくなる」と話すのは、地元後志の食材を使った料理を振る舞う小樽市のカフェバー「石と鉄」(色内2)の中源博幸店長(38)。手軽に作れる料理を二つ紹介してくれた=末尾にレシピ=。
ニシンの切り身に5ミリ程度の間隔で包丁を傾けるようにして切り込みを入れると小骨がほとんど気にならなくなるという。1品目のマリネは食材を調味料につけて冷蔵庫に入れるだけで簡単にできる。中源さんは「その際、ラップをニシンに密着させると落としぶたのような効果で味が浸透する」とアドバイスする。酢に漬けると小骨が柔らかくなり食べやすくなる。脂が乗った生ニシンは、白ワインにもぴったりだ。
2品目は、ニシンと大葉のフリットスイートチリソース添え。片面ずつ揚げることで、油の使用は少量で済み、手軽に作れる。辛み・酸味・甘みの効いたソースと大葉との相性が良く、さっぱりとした味わいとなる。火を通すと、生とは違ったふんわりとした食感が楽しめる。(斎藤夏美)
*漁獲回復 資源管理が奏功
北海道水産現勢(水産統計)によると、2022年の道内のニシン漁獲量は前年の約1・4倍の2万306トン。20年前の15倍となり、資源回復が続いている。
明治期には日本海を中心に100万トンに迫る規模だったが、海水温の上昇や乱獲などで1950年代から減少し、一時は「幻の魚」と呼ばれていた。
道立総合研究機構中央水試(後志管内余市町)資源管理部の主査城幹昌(じょうみきまさ)さん(46)は「1996年からの放流事業、小型のニシンをとらないなどの資源管理、海水温やえさの条件が良くなったことなどが、漁獲量の増えた要因として考えられる」と説明する。
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■ニシンのマリネ
◇材料(2人分) ニシン1匹(150~200グラム)、パプリカ、タマネギ各10グラム、ミニトマト1個、酢50グラム、砂糖12グラム、オリーブオイル少々、塩3グラム、こしょう少々、ピンクペッパー少々、生パセリ少々
◇作り方
下準備として、ニシンの皮をむき、身を裏返して5ミリ間隔で斜めに包丁を入れて小骨を切る。(フリットも同様)
①鍋に酢と砂糖と塩を入れ、砂糖が溶けるまで軽くふりながら弱火で熱する。
②①を常温まで冷まし、オリーブオイルを入れて混ぜる。
③ニシンの切り込みを入れた面を下にしてバットに入れ、上から②の液をかける。4分の1に切ったミニトマト、薄くスライスしたパプリカとタマネギ、こしょうも入れる。
④ニシンの上からラップをかけて密着させ、冷蔵庫で2時間冷やす。
⑤ニシンを一口サイズに切り分け皿に乗せ、ミニトマト、タマネギ、パプリカ、ピンクペッパー、生パセリを盛り付ける。
■ニシンと大葉のフリット スイートチリソース添え
◇材料(2人分) ニシン1匹(150~200グラム)、大葉10枚、レモン1/8個、天ぷら粉100グラム、油130グラム、塩、こしょう各少々、スイートチリソース(適量)
◇作り方
①ニシンの両面に塩とこしょうをかけ、厚さ3センチに切る。
②ニシン1切れに大葉1枚を巻く。
③天ぷら粉に水120ccを入れて混ぜ合わせ天ぷら衣をつくる。
④フライパンに油を入れて中火で熱し、③の液を数滴垂らしフツフツしてきたら、ニシンに衣をつけ、フライパンに並べて片面2分半ずつ揚げる。
⑤皿にスイートチリソースをかけて、その上にフリットの断面を見えるようにかざり、レモンをのせる。
(北海道新聞2024年3月21日掲載)
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