落ち葉をこんもり盛って形づくったクジャク、サクラの花びらを集めた流星群、いがぐりを積み上げたクマ、公園のいすとテーブルでティータイムを楽しむ小さな男の子の雪像「雪ボーイ」…。札幌・円山公園やその周辺などで、季節に応じて天然の素材をつかった「自然アート」が出現し、話題を呼んでいます。だれが、いつ作っているか分からないことから、正体不明の芸術家バンクシーになぞらえ、交流サイト(SNS)では「札幌のバンクシー」とも呼ばれ、ファンが増えています。
制作者は札幌市中央区のデザイナー田中宏美さん(48)。2019年の冬、自宅近くの公園に積もった雪を見て、「雪遊びをしてみよう」と雪だるまを作ってみたのが始まりでした。田中さんは清水町の出身で、小さいころは「寒すぎて雪がさらさらで固まらず、雪像を作って遊んだ記憶はありません」。その反動か、「大人になってから雪遊びをしてみたら、楽しくてはまってしまいました」と言います。
ただ、公園がせまく、いたずらですぐ壊されてしまうことから、円山公園に場所を移しました。円山公園に設置されているベンチに「座らせてみよう」と思い立ち、男の子の雪像をつくり、マフラーや帽子をかぶせて「雪ボーイ」と名付けました。雪像づくりに使っていたバケツをヒントに、雪ボーイの友達「バケツ太郎」も誕生しました。
円山公園にはエゾリスもいます。公園内の木に登るエゾリスも作るようになりました。その後、円山公園にはクマの親子やウサギ、カエル、ネコ、クワガタなど、雪でできた動物たちが次々と登場するようになりました。木に登るリスやウサギは、木の形を見ながら幹に雪を貼り付け、へらや手で形を整えて数十分で完成させます。
昨年2月には、札幌市円山動物園からの呼びかけで、さっぽろ雪まつりに合わせて同動物園で開かれる「スノーフェスティバル」の一環として、同動物園内に動物たちの雪像も作りました。
田中さん自身がインスタグラムで雪像の写真を公開しているほか、同フェスティバルの来場者や円山公園で犬を散歩させる人たちが注目し始め、SNSでも話題になっています。
田中さんは2021年、「冬以外にも何か作れないかな」と考え、公園内の落ち葉で地面に模様を描いたり、動物たちをつくることを思いつきました。円山公園の入り口に落ち葉を集め、流星をつくったのが、落ち葉アートの始まりです。
その後、「くまのプーさん」やクジャク、フクロウ、ワニなどさまざまな動物やキャラクターを制作。円山動物園のインドゾウに赤ちゃんが生まれた2023年秋には、タオと名付けられた赤ちゃんをお祝いするアートも作りました。
落ち葉アートはこの時期なら、針葉樹の落ち葉をほうきで集め形を整え、落ちている緑色の葉やどんぐりなどの実で飾り付けるなどして、20分ほどで完成させます。作っている途中にも、散歩中の人や通りがかった人から「すごい」「写真を撮ってもいいですか」などと声を掛けられていました。くまのプーさんの前では、子どもも一緒に記念撮影していました。
地面に形を作るだけでなく、立体的な造形も手がけます。枯れた葉や花の房を積み上げ、木の根に腰をかけ、幹に寄りかかるクマは「モジャクマ」と名付けました。クリのいがを集めて立体的なクマの顔も創作。田中さんは「雪も落ち葉も半立体・立体を作ることができるのがおもしろい」と話します。
札幌ではサクラの満開宣言が4月22日に出され、円山公園ではすでに散り始めています。田中さんは散ったサクラの花びらを集めた「サクラアート」も手がけます。「サクラが咲くとうれしいけれど、散った後、何かを作るのも楽しみ」。円山公園やその周辺で、田中さんのアート作品を探してみてはいかがでしょう。
田中さんの創作活動は、インスタグラムアカウント(@tana163)で見ることができますよ。
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