朝晩の寒暖差が大きく、日照時間に恵まれた北見地方は、甘いメロンの栽培に適している。大型店やスーパーに並ぶ「くんねっぷメロン」は、贈答品としても人気を集めるブランドだ。訓子府町で栽培農家や選果場を訪ねた。(五十嵐文弥)
町内若富町の農家小林誠さん(51)はこの時期、朝夕2回メロンを収穫する。品種はオレンジ色が鮮やかなルピアレッドだ。
「甘いメロンを出荷したいのでぎりぎりまでビニールハウスに置く。へたの周囲が割れないよう朝夕収穫するんです」。適期の見極めは母が行う。丸々とした玉は大きいもので1・6キロくらい。今年は甘みが乗って糖度17度ほどあるという。
3月初めに種をまき、ハウスで育苗し、定植後は摘芯作業も。ハチを使って受粉させ、着果後55~60日で収穫する。摘芯、摘果、収穫はすべて手作業。雨が降れば水が入らないようにするなど、天候や気温に応じた細やかなハウス管理が必要で「家を空けることはできないね」。
訓子府でメロン栽培が始まったのは1960年代後半。タマネギ育苗後のハウスを有効活用し、80年代末ごろには栽培農家が大きく増えた。
ルピアレッド導入当時、農協でメロン担当だった森豊司さん(62)によると、それ以前は青肉のキングメルティーが主力だった。「おいしいが日持ちせず、ネットを均一にかけるのも難しい。名人にしか作れないメロンだった。ルピアレッドは栽培しやすく、試作後1、2年で一気に切り替わった」と話す。このほか少量だが、6種類ほどが町内で生産されている。
メロンはハウス内で行う摘芯作業などが大変で、手掛ける農家が減っている。広く平らな農地のある訓子府では、労働負荷の大きいメロンからタマネギの大規模作付けへシフトしてきた。最盛期に120戸ほどあったメロン農家は現在47戸で高齢化も進む。
選果場では、日本通運北見物流事務所の篠永美和さん(59)が格付け検査をしていた。白箱に入れるメロンの等級は秀、優、特優、特の4段階。農家が収穫したメロンを持ち込むと、篠永さんが玉を持ち上げて見入る。「形のほか、ネットの張りが均等か、底にきずがないかなど、買う人の目線で見ています」。箱に印が押され、等級ごとにまとめて市場に運ばれる。
1玉のくんねっぷメロンには多くの手間がかかっている。それを実感した現場だった。
*季節限定スイーツも販売
生産者団体の訓子府町メロン振興会と町は、ブランドを守るため定期的に意見交換し、各種の取り組みを続けている。
2017年には振興会が「くんねっぷメロン」の商標登録を行った。シールにしてメロンに貼っている。受粉のためのハチ導入費用の助成を町が行ったこともある。
昨年からは、町内のカガミ菓子店と協力し、収穫時期に合わせてメロンを使ったケーキなどスイーツの販売を始めた。季節限定の商品だ。
きたみらい農協のエリアでは、北見地区でも「北見メロン」が作られている。訓子府より少し早い6月下旬から収穫が始まり、贈答用にも使われる。また、端野地区の一部では青肉のメロンが作られている。
(北海道新聞2022年7月20日掲載)
〈これが旬!〉輝く黄色 ひまわりすいか*空知管内北竜町*糖度11度以上 みずみずしく