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2024.05.25

From北海道新聞

〈旬!を味わう〉幻のラスノーブル 美瑛で生産*露地アスパラ*風で曲がるやわらかさ

北海道新聞記事
北海道新聞記事
アスパラと鶏肉の照りマヨ丼
アスパラと鶏肉の照りマヨ丼

 上川管内美瑛町で、太陽の光をたっぷり浴びておいしさが凝縮された露地物のアスパラが旬を迎えている。

 アスパラ出荷量日本一の北海道。農林水産省の作物統計調査によると、2022年産の出荷量は、北海道が3190トンで全国の約13%を占め、2位は熊本県2170トン、3位は佐賀県2110トン。

 美瑛町は道内有数の産地。町内では83戸、約105ヘクタールで生産されている。昨年の収穫量は174トン。今年は約180トンの収穫を予定している。今年のアスパラの市場価格は150グラム約130~250円と、例年並みだという。

 収穫は全て手作業で行う。すくすくと育った畑一面に生えるアスパラを、専用の鎌を使い、周囲を傷つけないように気をつけながら丁寧に採る。露地物の収穫は4月下旬から6月下旬ごろまで。

 美瑛町では、「HLA7」「スーパーウェルカム」など収穫量が安定している一般的な品種も生産されているが、昨年の収穫量の3割を占めたのが、美瑛独自の品種「ラスノーブル」。風が吹くと曲がってしまうほどやわらかく、強い甘みとうまみが特長だ。同町が唯一の産地とされ、市場に流通する数も少ないため、「幻の品種」と呼ばれている。

立派に育ったラスノーブルを収穫する白金アスパラガス生産部会の沢尻朋希さん
立派に育ったラスノーブルを収穫する白金アスパラガス生産部会の沢尻朋希さん(熊谷洸太撮影)

 町内でアスパラを生産する白金アスパラガス生産部会部会長の沢尻朋希さん(50)は「まずは素材の味を感じてほしい」と、さっとゆでてマヨネーズをつけるか、グリルなどで焼き目がつくまで加熱して塩で味付けするシンプルな食べ方を勧める。

 一般的に野菜は寒さから自分の身を守るために糖度を上げて成長するため、沢尻さんは「美瑛町の昼夜の寒暖差の大きさが生産に適している」と話す。

 美瑛町農業協同組合(JAびえい)のおすすめレシピは「アスパラと鶏肉の照りマヨ丼」。JAびえい販売部青果課主任の高橋巧さん(29)は「ぷりっとした鶏もも肉と、やわらかい中に歯ごたえも感じられるアスパラ特有の食感の相性が良い」と話す。濃厚な照りマヨソースは満足感があり、ご飯が進む味付けだ。好みでいりごま、紅しょうが、温泉卵をトッピングするとさらに豪華になる=末尾にレシピ

 アスパラは太さによっても味わいが変わるといい、細めのアスパラはしゃきしゃきと食感を楽しめる炒め物に。太めのやわらかいものは、ゆでたり焼いたりしてシンプルに調理することを勧める。

 高橋さんの周囲で1番人気の食べ方は、ゆでたアスパラを酢みそであえる「アスパラの酢みそあえ」。酢みその酸味により、野菜の香りや甘みが引き立つ一品だという。

自慢のアスパラガス「ラスノーブル」を持ち、笑顔を見せるJAびえいの高橋巧さん(左)と白金アスパラガス生産部会の沢尻朋希さん
自慢のアスパラガス「ラスノーブル」を持ち、笑顔を見せるJAびえいの高橋巧さん(左)と白金アスパラガス生産部会の沢尻朋希さん(熊谷洸太撮影)

 アスパラには、疲労回復効果が期待できるアスパラギン酸が含まれている。高橋さんは「疲れた時に食べてほしい」と話す。 (斎藤夏美)

*国内唯一 存続へ苗培養*町とJA*輸入先が種の生産終了

 「ラスノーブル」は、美瑛町が国内唯一の産地。もともと「フルート」というホワイトアスパラ用の品種だった。甘みと柔らかさが特長で、曲がりやすいため栽培が難しく、他の地域で定着しなかった。

 同町では、アスパラ栽培に恵まれた気候・風土と合い、1991年から栽培が始まった。その後、生産が拡大し、2008年には約113ヘクタールで栽培されるようになった。

 ただ、輸入先の欧州の種苗会社が種の生産を終了し10年には供給も停止。アスパラは約10年で株の更新が必要となるため、このままでは、ラスノーブルがなくなってしまう。

 そこで、20年度から美瑛町とJAびえいなどが連携し、ラスノーブルの苗の培養を開始。25年度にも生産者へ苗を供給できるように準備を進めている。同町農林課の平間克哉課長(56)は「今後も美瑛のラスノーブルを多くの方に味わってもらえるよう、生産を続けられる体制を整えていきたい」と話す。 (斎藤夏美)

♢ ♢ ♢

■アスパラと鶏肉の照りマヨ丼
◇材料(2人分) 鶏もも肉200グラム、アスパラ5、6本、長ネギ1/2本、かたくり粉大さじ1.5、酒大さじ1.5、A(しょうゆ大さじ2、みりん大さじ2、砂糖大さじ1)、サラダ油小さじ1、ご飯、マヨネーズ各適量

◇作り方
①鶏もも肉は一口大に切り、かたくり粉をまぶす。アスパラは食べやすい大きさに切り、長ネギは斜め薄切りにする。
②①のアスパラにラップをかけて、電子レンジ500ワットで1分加熱する。
③サラダ油をひいたフライパンを中火にかけ、①の鶏もも肉を焼く。両面に焼き色が付いたら弱火にして酒を加えふたをして5分ほど蒸し焼きにする。
④Aを混ぜて③のフライパンに加え、たれをからめるように鶏もも肉を焼く。
⑤④のたれが煮詰まって半分ほどになったら、①の長ネギと②のアスパラを加えてさっと炒める。
⑥どんぶりにご飯を盛り、上に⑤を乗せてマヨネーズをかける。

(北海道新聞2024年5月23日掲載)

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