水質の良い樽前山の伏流水を求めて苫小牧へ
防腐剤パラベンや合成香料などを使わない「無添加主義」を掲げる化粧品メーカー「株式会社ハーバー研究所」は、水と空気のきれいな苫小牧市に工場を構えています。工場では、製造工程をガラス越しに見学できるほか、敷地内の一画は四季折々の表情を見せるガーデンとなっており、見学者が散策できるようになっています。ガーデンはさまざまな賞を受けており、苫小牧の工場は「庭園工場(ガーデンファクトリー)」と呼ばれています。
ハーバー研究所は1983年に東京で故小柳昌之氏が創業。小柳氏が北海道出身だったこともあり87年、新千歳空港にほど近い苫小牧市の白鳥湖近くに工場を建て、90年に現在地に移転しました。工場はハーバー研究所の製造子会社ハーバー株式会社が運営しています。
苫小牧が選ばれたのは、空港や港が近いという立地に加え、水質の良さでした。苫小牧の水は樽前山の伏流水で、〝天然のろ過装置〟をゆっくり通り浄化されます。苫小牧市の水道水はそのおいしさから、ペットボトルに詰め「とまチョップ水」として販売されており、2023年度には約9万9000本を売り上げたほど人気です。
「いらっしゃいませ」。ハーバーの建物に入ると、10人以上の従業員がずらりと並び、出迎えを受けました。見学者が来社した時には、いつもこうして歓迎するそう。少し照れますが、すがすがしい気持ちになります。
最初に会社紹介のビデオを見ます。ハーバーは「Health Aid Beauty Aid(ヘルスエイド・ビーティーエイド、美と健康を助ける)」の略からとったそうです。防腐剤パラベン、合成香料、鉱物油、タール系色素、石油系界面活性剤の5つを使わない「無添加主義」を掲げます。
衛生管理が徹底された製造工程をガラス越しに見学
製造工程は、大きなガラス越しに見学できます。原料の調合は、バックヤードの4つの部屋でしているので、見学は充填の工程から。充填室は外部の空気が入らないように気圧を調節し、陽圧になっており、機械は徹底的に洗浄、殺菌され、厳密な衛生管理がされています。従業員は着替えた後、エアシャワーやくつの裏のごみを取るマットを通り、粘着テープも使ってごみやほこりを徹底的に排除します。衛生管理は製薬会社に準ずる水準だそうです。
包装仕上げは、人の手で行います。ふたの緩みや傷がないかなどを確認しながら、化粧箱にひとつひとつ入れていきます。「確認しました」「はい」などと声を掛け合いながら、チームで作業を進めます。声を出すことで集中力が増すそうです。帽子がピンクの従業員はマネジャー、青はチーフ、緑はサブチーフ、白は一般の従業員で、毎日チーム編成が変わります。毎日違うメンバーで仕事をすることで、緊張感を維持するそうです。
サクラやツツジ、バラ…四季折々の表情を見せるガーデン
ガーデンの広さは約5100平方メートル。「見学者や地域の人に自然を感じてもらいたい。従業員も緑を見て心を休めてほしい」と、2008年に造成しました。
小高い丘をつくり、頂上には大きな石を積み上げました。ハーバーは東南アジアなど海外にも販売されており、一部の外国人旅行者の間ではこの石が「パワーストーン」とうわさされているとか。来日した際に写真を撮っていく人もいたそうです。
従業員用駐車場から工場までの道沿いにはエゾヤマザクラが並び、春にはピンク色の桜並木が従業員の出退勤を見守ります。ツツジや苫小牧市の木のナナカマドなど低木も含めると1700本ほどの樹木が植えられています。
一番の自慢は、バラです。樹高1メートルほどのシェリーメイディランドというバラで、6月中旬から7月にかけ、5~6センチほどの小ぶりの花を付けます。花は深紅で中心だけが白いかわいらしい花です。
雪の少ない苫小牧ですが、冬には一部の木の冬囲いをします。天気が良い日には、白い衣をまとった丘の向こうに沈む夕日がきれいに見えます。
このガーデンは、緑化への積極的な推進と環境の向上に寄与したとして2010年、北海道経済産業局の緑化優良工場として表彰されています。一般開放はしていませんが、工場見学(要予約)をすると、散策できます。
住所…苫小牧市新開町3丁目3-2 |
電話番号…0144・55・2244(見学は要予約。夏季冬季休業以外の平日午前9時半~午後5時に受け付け) |
ハーバー研究所ホームページ…https://www.haba.co.jp/ |
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お肌や髪の調子を整え、美しさを保つ化粧品。品質の良さだけでなく、ユーザーの心のうるおいアップや環境への配慮をアピールする化粧品メーカーも少なくありません。安全・安心をアピールするとともに、消費者の心もつかもうと、製造過程を見学でき、カフェやガーデンなどを併設する化粧品工場もあります。そんな北海道内の化粧品工場3つを紹介します。