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障害のある人たちの就労支援に取り組むリベラ(札幌)が、北大植物園に隣接する札幌市中心部に試飲所を併設したワイナリー「リベラワインテラス」を開設しました。醸造家の経験や勘をデータ化してAI(人工知能)に学習させた醸造システムを構築し、障害のある人たちが、余市町や仁木町などで栽培した農薬や除草剤不使用のブドウやリンゴでワインやシードルを醸造します。試飲所ではスライスしたフランスパンに具材をのせたブルスケッタと一緒に、ワインやシードルを味わうことができます。
ブルスケッタと一緒にワインやシードル試飲
試飲所では、リベラの利用者が育てたブドウやリンゴを使い、道内3カ所のワイナリーで委託醸造したワインやシードルを飲むことができ、ボトルで購入もできます。現在はナイアガラスパークリングの2019と2020、シードルの2022と2023、スティルのナイアガラ2023、ツヴァイゲルトレーベ2019の6種類。ベリーベリーファーム&ワイナリー仁木(仁木町)と八剣山ワイナリー(札幌市)、滝沢ワイナリー(三笠市)に委託醸造したものです。
試飲所では、ブルスケッタ専門店「ブルスケッタ MILO(ミロ)」が営業。ブルスケッタはイタリア中部の郷土料理で、スライスしたフランスパンをあぶり、その上にさまざまな具材をのせます。ミシュランガイド一つ星の和食「みえ田」(札幌市中央区)のオーナー三枝展正さんがコンセプトを考案し、イタリア料理「TRATTORIA DA OKUMURA」(同)のオーナー奥村雄史さんが料理指導をしています。
「フルーツトマトとブラータ バジルの香り」「軽くマリネしたホタテとからすみ」「ニンニク風味のマヨネーズトスカーナ風鶏レバーと鶏ハツのパテ」など、北海道の旬の食材を使ったブルスケッタを3~4種類、用意します。
6月末までは予約制で、6月24日から予約を受け付けます。7月からは予約なしでも利用できます。カウンター8席のほか、テーブル席もあります。ワインはテイスティング(30cc)400円から、グラス1杯1000円から、ブルスケッタは1つ1000円から。
「自社ブドウによる自社醸造」は今秋から
リベラは2021年から、離農などで手放された果樹園を引き継ぎ、障害のある利用者と農薬や化学肥料、除草剤を使わず、農作物を育てています。余市町にはナイアガラやケルナー、ピノノワールなどのワイン用のブドウの木が3800本、仁木町にはリンゴの木が400本、札幌市の八剣山にはサクランボの木や育苗地、江別市の野幌にはハスカップやブルーベリーの木があり、岩見沢ではタマネギも生産してます。農地は計12.5ヘクタールに上ります。
ワイナリーは冬の閑散期にも、障害のある人が働く場を-と、建設を構想。冷凍のブドウなどを使い、年2回ほど仕込みを予定しているそうです。自社の原料だけでなく、委託醸造も請け負い、障害のある人たちが通年で仕事ができるようになります。
ワイナリーには、醸造、熟成用のステンレスタンク11基を備えています。タンクが並ぶ横には、階段がついています。通常ははしごを立てかけて作業しますが、障害のある人にも作業がしやすいように、タンクの上部からのぞき込むことのできるキャットウォークが取り付けられています。
製造は、年間1万6000本。自社のブドウを使った初めての自社醸造は今秋からで、リリースは来年春です。ワインのブランド名は「MILO(ミロ)」。「究極の美」を意味し、ブドウの栽培方法から醸造まで「究極の美」を追求するという姿勢を示したそう。ワインのエチケットは、「夢の扉を開く」をコンセプトに、美唄市出身の彫刻家安田侃さんがデザインしました。
各種データを学習したAIが最適な作業に導く
AIを活用した醸造システムは、リベラ顧問で、苫小牧高専名誉教授の吉村斎さんと北大名誉教授の古川正志さんが代表取締役を務めるソフトウエア設計のM&M知能ラボ(旭川)が開発しました。発酵や熟成などワインの製造工程で、糖度や酸度、PH、温度などのデータをとり、醸造家の協力で、どの数値でどんな作業をするかを記録し、それらをAIに学習させます。3年程度、データを収集し、目指すワインのアルコール度数や味にするために必要な温度や湿度などの環境、作業をAIが導き出すことができるようにします。
古川さんは「熟練した醸造家が経験や勘でしている作業や、目指すワインに必要な環境について、AIが指示することで、障害のある人もワインづくりができるようになります」と説明しています。
住所…札幌市中央区北2条西10丁目 |
電話番号…011・200・0844 |
営業時間…午前11時~午後7時 |
定休日…不定休 |