【利尻富士】コンブの見た目も味も楽しんで―。町鴛泊の出張(ではり)成子さん(71)が特産の利尻昆布を編み込んで金魚や花の形をつくる「昆布細工」の作品を手がけている。1人で年に約3千個以上を作り、「鍋に入れてそのまま食べられる」と土産品としても人気だ。
長さ約70センチ、幅約1センチに切ったコンブ2本を手に取り、手際良く編み込む。丸みを帯びた尾びれが愛らしい金魚が数分で完成し、コンブの香りもふわっと漂う。「飽きずに作り続けられるってことは、昆布細工が好きなんだろうね」とちゃめっ気たっぷりに笑う。
20年ほど前、コンブ干しを手伝う傍ら「島の子どもたちにコンブに興味を持ってほしい」と思い立ったのがきっかけだ。荷造りに使うプラスチック製のバンドを編み込む手芸を応用した。折り曲げやすいよう養殖コンブを選び、水にぬらしてから加工している。
「作品を食べてほしい」と試行錯誤を重ね、今は接着剤を使わずに仕上げている。15年ほど前に商品化し、地元の小中学生や観光客向けに作り方を教えたことも。「小学生が『すごい!』と驚いたり、観光客が『かわいくて食べられない』と言ってくれたり。その声がうれしい」と語る。
毎年3~5月に自宅で作っている。軽くて見た目もきれいで食べられるため、お土産にも人気だ。「作り出したら止まらない。寝るまでずっとコンブを触っている」とほほ笑む。
今月から、孫で高校1年の星空(そら)さんがインスタグラムで「利尻島のばあちゃん」というアカウント名で作品を投稿している。恐竜など新たな作品にも挑戦している。出張さんは「昆布細工を知ってもらうきっかけになれば」と話す。鴛泊港フェリーターミナル前にある利尻漁協の組合ストアーで1個249円で販売中。 (菊池真理子)
(北海道新聞2024年6月27日掲載)