ワイナリーが集積している北海道・仁木町の旭台地区を歩いて巡りながら、仁木町産ワインとフードのペアリングを楽しむイベント「ワイリングウォークフェスNIKI2024」が7月7日(日)、開かれました。ブドウ畑や自然の木々に囲まれながら、10のワイン生産者と17の飲食店が提供したおいしいワインとフードをTripEat編集部のスタッフと一緒に楽しんできました。
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旭台地区の1.7キロメートルを歩いて飲み歩き
実行委の取材で、昨年に続き2回目。完全事前予約制で約400人が参加しました。旭台地区は仁木町の東部、余市川の南側斜面に位置し、ワイナリーやヴィンヤードが数多くあります。旭台地区の約1.7キロの道路沿いに点在する5カ所の会場に、ワイナリーが各2つ、フードを提供する飲食店が各3~5店、出店。「ワイリング」は「ワイン」と「ペアリング」を組み合わせた造語で、参加した飲食店は、同じ会場に出店したワイナリーのワインとペアリングしたフードを考案、販売しました。
最初に仁木町民センターで受付をし、グラスホルダーとデポジット制(500円)で貸し出してくれるワイングラスを受け取ります。そこから、コースの両端にある、旭台地区南西部の「NIKI Hills Winery」と同地区北東部の「ドメーヌアルビオーズ」までは送迎バスが出ています。
ニキヒルズワイナリーとTOMAPU FARMで最初の1杯
小高い丘の上にある、ニキヒルズに到着です。すでに大勢の人がテントの下や木陰でグラスを傾けていました。1杯目はスパークリングが飲みたくて、ニキヒルズのロゼスパークリング「PROPOSE ROSE Sparkling(NV)」を選びました。ロゼですが、色はほとんど付いておらず、白のよう。仁木町のワインらしく、すっきりとした酸があり、さっぱりとした味わいです。
次に、TOMAPU FARMの白「NATSU2023」をいただきます。まだリリースしておらず、エチケットがありません。ケルナーの香りが良く、「夏」のネーミングの通り、さっぱりしていて、水のようにごくごくいけそうです。3月に開かれた仁木町のワイナリーのワイン会「仮面葡萄会」で飲んだTOMAPU FARMのワインは、まろみの感じられる柔らかな味わいでしたが、まったくテイストが違います。
ニキヒルズのレストラン「Aperçu(アペルシュ)」の永井尚樹シェフがいました。永井シェフ渾身の作の「北海道産雲丹と五四○のアンサンブル」をいただきます。雪室貯蔵で540日熟成させた俱知安町産のジャガイモ「五四○」のピューレにぜいたくに大粒のウニがのっています。五四○の甘さとウニのまろやかさがおいしい。これは、ニキヒルズのフラッグシップワイン「HATSUYUKI2022」のペアリングとして考案したそうですが、さわやかな酸のある白なら、ほかのワインでも合いそうです。
One Tune Winesと仁木産業振興社のレアなワインを味わう
次の会場に移動しましょう。ニキヒルズのガーデンを見ながら丘を下り、仁木集会所に向かいます。「先週リリースしたばかりですよ」と大きな声で呼びかけている人がいました。「One Tune Wines」の月岡壮太さんです。ロゼスパークリング「DF/C♯2023」は、ワンチューンのファーストヴィンテージで、ドメーヌブレスのブドウを使い、同醸造所に委託醸造しました。早摘みのドルンフェルダーをベースに、早摘みのシャルドネをアクセントにしています。ワインが入っていると見にくいのですが、エチケットには味わい深いブドウの絵が描かれています。
仁木町の地域おこし協力隊員と元隊員がつくった「合同会社仁木産業振興社」も出店していました。山口光市さんにおすすめを聞いたところ、赤の「Landscape2023」を出してくれました。苗を植えて3年目の昨秋、初収穫したピノノワール200キロで醸造。できたのは、わずか156本です。少しおりの入った、しっかりめの赤。山口さんが「本当はもう少し、寝かせたい」と言う通り、ちょっと角のある飲み口ですが、初収穫でこのできなら、来年以降の本格生産がとても楽しみです。
TripEat編集部のスタッフが、スペイン料理店「XiRiMiRi」(仁木町)の「シカ肉と行者ニンニクのハンバーガー」を買ってきてくれました。これは、仁木産業振興社の白スパークリング「NARI-YUKI Patillant Blanc旅路2023」に合わせたペアリングメニュー。旅路は、小樽市塩谷で栽培されていた山ブドウ系の品種で、昨夏は暑すぎてブドウの傷みがひどく、選果を厳密にしたところ、雑味がなくなりすぎたので、ピノ・ノワールの皮と種を袋に入れて漬け込み、香りやタンニン、渋みを少し移したそうです。
バーガーはシェアして、スタッフは旅路と合わせ、私はランドスケープと一緒にいただきます。パテはシカ肉らしく、しっかりした食感。たっぷりめに入ったクリームチーズのソースと良く合います。あれ?行者ニンニクはあまり、感じられませんでした。
この会場には、「ワインガチャ」がありました。1回100円でカプセルトイの販売機を回すと、仁木町産ワインが当たるかも-という魅力的な企画です。とても混み合っていたのと、早くワインが飲みたかった気持ちを優先し、ワインを飲んでいると、すべての景品が出て、終わってしまいました。当たった人、おめでとうございます。
次の会場「naritaya」に着くと、ブースの前にものすごい行列ができていました。どうやら、団体さんが一斉に到着したようです。大好きな「MARUMEGANE」が比較的、空いています。それでも並んで、白の「DELAWARE」を1杯入手。おいしーい!デラウエアは本当はあまり好みではないのですが、華やかさが香り立ち、優しい味わいです。
このワインのペアリングメニュー「merci scone」(余市町)の「季節のフルーツを使ったスコーン」をTripEat北海道編集部スタッフとシェアしながら、味わいます。間にはさんであるチーズクリームの優しい味が、ワインにぴったりです。ナリタヤの前にできている行列が全然縮まらないので、あきらめて次の会場に移動します。
ジブリの音楽に乗せて楽しむDomeine BlessとNorth Creek Farm
「Domeine Bless」に到着です。天気は当初からくもり。蒸し暑く、午後からは雨の予報ですが、ここまではどうにかもっています。
「North Creek Farm」の「Ecru 2023」をいただきます。白の混醸で、優しい香りが立ち上り、口に含むとブドウの果実味を感じます。TripEat北海道のスタッフは、「Pinot Noir Blanc 2023」とペアリングの「ワインビストロカタバミ」(小樽市)の「後志産トマトといちごのガスパチョ」を買ってきました。味見をさせてもらうと、かすかなトマトの青い香りと、ワインの果実味がぴったりです。イチゴは…見つけることができませんでした。
ドメーヌブレスのブースに向かうと、「縁」や「雅」といったフラッグシップワインに混ざって、「楽」や「十二単」といった、見たことのないものも並んでいます。悩んで、ペアリングメニューがあった赤「糸2022」をチョイス。フードは「ルコネッサンス」(名古屋市)の「鰯のリエットと焼き茄子の冷製」です。
メルロー100%の糸は、深みのある赤色。メルローですが、渋みはなく、ベリー系の果実味とさわやかな酸があり、味わいはしっかり、でも後味はすっきりしています。282本しか生産されておらず、貴重な1杯です。フードは、つるんとした焼きなすの上にイワシのなめらかなリエットがのせられ、赤じそのジュレがかかっています。ジュレにはカリカリ梅が入っていて、いいアクセント。味付けは優しく、なめらかな舌触りの糸と一緒に味わうと、格別です。
naritayaとMARUMEGANEは戻ってでも
ぽつぽつと雨が落ちてきました。会場では、アコーディオン奏者がジブリのアニメーションで使われた曲を中心に奏でており、ゆったりした空気で居心地がいいのですが、そろそろ行きましょう。5カ所目、最後の会場に…と思いきや、そうはいきません。ドメーヌブレスの前、大行列に屈してナリタヤをあきらめたことを忘れていません。飲み逃すわけにはいかないので、微妙な登りのだらだら坂をものともせず、ナリタヤに戻ります。
ナリタヤの成田真奈美さんにおすすめを聞いてみると、「シャルドネかリースニングはいかがですか」とのこと。ナリタヤのエチケットは「おばけのマール」の絵を描いている中井令さんの作で、ブドウを狙うさまざまな動物たちが描かれています。迷って、より悪そうな顔でブドウをくわえたシカが描かれたリースニングにします。エチケットも、ワイン選びの楽しさのひとつですね。リースニングは酸が高く、さっぱり。すうっと入ってしまいました。
すぐに飲んでしまったので、おすすめのもう一方、おけに入ったブドウを狙うキツネが描かれたシャルドネもいただきましょう。香り高く、すっきりした中に、柔らかさも感じます。わざわざ飲みに戻ってきたかいがありました。実は、先ほどのマルメガネをもう1杯いただいて、さて今度は本当に最後のドメーヌアルビオーズに向かいます。
ドメーヌアルビオーズとドメーヌ・イチを雨音とともに堪能
到着したのは、午後2時すぎ。たくさんの人がワインを求めて並んでいます。アルビオーズの白「BONBORI(雪洞) 2021」で、本日何度目かの「駆けつけ1杯」。アルビオーズが自社栽培ブドウで、ドメーヌブレスに委託醸造した初ヴィンテージです。ケルナーらしい穏やかな酸味に、みかんのような柑橘系の香りがします。
テントの下で雪洞を味わっていると、突然、雨がザーザーと降ってきました。ウオーキング中に雨に当たらず、ギリギリセーフ。雨と同時に、大行列を作っていた人たちが、一気に退散していきます。これはチャンス!さほど並ばず、「ドメーヌ・イチ」のブースで白「ピノ・グリ2022」を入手。酸味は少なめで、ブドウの味わいがしっかりしています。
雨音を聞きながらゆっくり味わい、また並ばずに白「ブラン・ド・ノワール2020」をいただきます。ピノ・ノワールを自然酵母で発酵させ、古樽で1年熟成の後、さらにびん内発酵させたそう。貴腐が70%入っているとのことで、甘いかなとちょっとちゅうちょしたのですが、これが大正解。グラスに顔を近づけただけで、ワインの芳香が立ち上り、口に含むと複雑で凝縮されたような深い味わいがあります。
この時点で、ほとんどの人が撤収していますが、バスの時間を確認し、「あと1杯いける」と、最後の1杯。ドメーヌ・イチの上田一郎さんが「さっきのが気に入ったのなら、きょうだいワインがあるよ」と教えてくれました。ブランド・ノワールが貴腐7、ピノ・ノワール3だったのに対し、逆に貴腐3、ピノ・ノワール7のロゼ「ピノ・ノワール2020」です。こちらは、ブラン・ド・ノワールに比べて酸が強く、複雑さや味わいの深さはありながら、さっぱりしており、まったく違った味わいです。好みの問題ですが、私は「ブラン・ド・ノワール」に1票です。
バスで町民センターに戻ります。グラスを返すと、JA新おたるが出店し、サクランボを販売していました。つややかな佐藤錦が1パック600円です。生産量道内1の仁木のサクランボ。うれしいおみやげになりました。ほかに、きのこ王国仁木店のなめたけや、仁木町のイメージキャラクター「ニキボー」のグッズなども販売されていました。