おでんや煮物、焼き魚に添えるおろしなど、食卓に欠かせないのが大根だ。本州では秋から冬の作物という印象だが、道内は夏から秋が旬となる。大根サラダなどでしゃきしゃきとした食感を楽しむのも良し、煮込んでさまざまな味付けを楽しむのも良し。道内主要産地の一つの羊蹄山麓を訪ねた。
ようてい農協(JAようてい)大根生産組合組合長の本田隆司さん(50)=後志管内留寿都村=は5ヘクタールで育てている。4月末から8月にかけ20回に分けて作付けし、育つまでに60日間。6月末から10月中旬に収穫する。季節に合わせ、寒さに強いものや暑さに負けないものなど4品種を順番に育てる。
このほか15種類程度の新品種の試験栽培もしている。経験の蓄積や技術の向上で単位面積当たりの収量は以前より多くなっているものの、気温や湿度は年々上昇しており、栽培は簡単ではない。変化する環境に適した品種を探る努力は怠らない。
収穫は毎朝午前3~4時ごろに始めて5時間程度。まだ気温が低い8~9時までに作業を終える。1日6千~7千本を収穫。2019年に村内に開設された集出荷選別施設で洗浄や選別、箱詰めを行う。80人が働いており、6レーンで1日1万8千~2万本を処理する。
大根はおろして食べることが多いが、首の部分に近いと甘めで先端に行くほど辛さが増す。「首近くなら子供でも大丈夫」と本田さん。また、目の粗いおろし金でおろせば辛く、目の細かいおろし金なら辛みが弱くなるという。同農協営農推進課係長の岡原隆也さん(31)は「おろして焼き肉に添えればさっぱりと食べられる。新鮮なものを生で楽しむのがお勧め」とPRする。
一方、おでんやふろふき大根など加熱調理をすると甘さが感じられる。本田さんは「春はやや柔らかく、今の時期はみずみずしいのが特徴。どんな味付けにも対応するのが大根だが、おろしで辛さ、煮物で甘さと、一本まるごと味わってほしい」と話す。 (佐藤仁)
*羊蹄産 量、質ともに安定
後志管内留寿都村での大根生産は1980年代半ばに始まった。冷涼な気候に適した作物で、雨天でも収穫できる取り組みやすさがあり拡大。春先はビニールで保温して育て、夏場は露地栽培をする。
現在、ようてい農協では同管内の留寿都、真狩、喜茂別、俱知安の4町村で84戸が生産組合をつくり、本州や札幌に出荷。今年は330ヘクタールを作付けし、約1万8千トンの収穫を見込んでいる。
品質安定化のため品種や規格の統一にあたっている生産組合は、来年で設立から丸20年となる。「8~9月に東京で食べられている大根の半分は羊蹄産」(本田さん)という。量、質ともに安定的に出荷できることが評価されて本州の漬物業者からも引き合いがある。
収穫は機械で行うがコンテナに並べるのは手作業で、1本1キロ強と重い大根を扱うのは体力的にもハードだ。作付けは十数年前まで計400ヘクタールを超えていたが、農家の高齢化や後継者難を背景に減少傾向にある。
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■大根の唐揚げ
◇材料(3人分) 大根1/3本、A(しょうゆ大さじ2、白だし大さじ1、みりん大さじ1、酒大さじ1、すり下ろしショウガ小さじ2、すり下ろしニンニク小さじ2)、片栗粉適量
◇作り方
①大根は皮をむき、一口大に切る。
②耐熱容器に①とAを入れて交ぜ、電子レンジ600ワットで5分加熱。もう一度交ぜてさらに3分加熱し、粗熱を取る。
③ ②に片栗粉をまぶして170度の油で揚げる。
(北海道新聞2024年9月26日掲載)