【南富良野】富良野地方では珍しい、パイがメインのカフェ「KUMADEL Cafe(クマデルカフェ)」(町内金山90)が人気だ。小高い丘の果樹農園に面した小さな店舗だが、サクサクした食感のパイ生地は町内外から評判で、平日でも開店から数時間で売り切れることもある。オープンから1年が過ぎ、切り盛りする田口郷さん(41)、紘子さん(45)夫妻は「店を訪れたいと思う商品作りを心がけたい」と奮闘する。
JR根室線旧金山駅から近い国道237号から細道に入り、登った所にある町営「金山小果樹農園」。隣接するプレハブが店舗だ。14平方メートルの店内には、定番や季節限定のパイ6、7種類が並ぶ。季節によって果樹園で採れたブルーベリーなどを使った飲み物も提供する。
旭川出身で北海道警察の元警察官・郷さんと、出身地札幌の菓子店で約2年勤務してパイ作りを学んだ紘子さんは、2021年10月に南富良野町に移住。ある時、野菜をもらった町民に紘子さんが手作りしたアップルパイをお礼に持参したところ、「おいしい」と好評を得たのがきっかけで昨年8月、念願の店を構えた。
パイ生地のバターは国産のみを使用。伸ばしてたたむ工程を3日間繰り返し、サクサクした食感を生み出す。一番人気のアップルパイ(480円)は、煮込んだリンゴのほどよい甘みが特徴で、好き嫌いが分かれるシナモンは入れず、食べやすく仕上げている。
評判は口コミで広がり、リピーターが増加。開業当初から通う町内の農家、永井洋平さん(37)は「アップルパイが特においしい。子どもたちはスムージーも大好きです」と太鼓判を押す。
平日は約100個、土日や祝日は約150個製造するが、午前中に売り切れることも珍しくない。日付が変わるまで仕込みを行う日々だが、「楽しいから続けられる」と2人は笑顔を見せる。
開業を後押ししてくれた町民への感謝を胸に、「果樹農園を知ってもらうためにも、ここでの販売にこだわりたい」と郷さん。紘子さんは「新商品を楽しみにして来る人がいる」と新作開発に意欲を見せる。
月曜、火曜、金曜定休(月曜祝日の場合は水曜休み)。午前9時~午後4時(売り切れ次第終了)。冬期も営業する。問い合わせは同店、電話090・2879・1354へ。 (千葉佳奈)
(北海道新聞2024年9月25日掲載)