
今年3月末に73年の歴史に幕を下ろした、JR東旭川駅近くの温泉施設「龍乃湯(たつのゆ)温泉」が10日、営業を再開した。施設の老朽化で一度は区切りを付けた「湯守」の夫婦は、復活を願う常連客の声に背中を押され、ボイラー修理など大がかりな改修に着手。代表の森井百合子さん(73)と裕さん(75)は「ぼちぼちと、続けられるだけ続けたい」と話す。
「やっと入れる」。10日午前、待ちわびた常連客が訪れ、名物の鉄分を含む赤茶色の湯に浸かると、満足そうにほほえんだ。
東旭川町史などによると、地元の農業者が1951年に創業。89年ごろからは森井さん夫婦が切り盛りしてきたが、老朽化した施設の度重なる修繕が重荷となり、「2人とも体の動くうちにやめよう」と閉館した。
長年愛された温泉。3月末の閉館後も、常連客からは「もうやらないの」と声を掛けられ続けた。99年に建てた現在の建物は、温泉のほか、24部屋(定員72人)ある旅館を併設。長年利用した学校や工事の関係者からの問い合わせも多かった。
当初はゆっくり旅行もしたが「だんだんと、なんだか物足りなくなって」と裕さんは振り返る。百合子さんも「恥ずかしいけれど未練があった」と話す。夫婦は決心して、お盆明けから施設や機材の修理を始めた。
資金は高額だったが、借り入れもして、水漏れのひどかったボイラーは部品の一部を取り換えた。再開するならばと、各部屋など30カ所以上にある空調設備を更新。シャワーヘッドやスリッパなども新しくした。
初日は夕方までに約40人が訪れ、久しぶりにカウンターに立った百合子さんは「人も建物もお風呂も前のまま。龍乃湯は変わっていませんよ」とほほえんだ。
日帰り入浴は午前10時~午後10時。火曜定休。料金は大人700円。宿泊は一泊2食付き1人8400円など。問い合わせは龍乃湯、電話0166・36・1562へ。 (後藤耕作)
(北海道新聞2024年10月11日掲載)