
秋の旬の食材、キノコ。生産地として有名な上川管内愛別町では、主にエノキダケ、ナメコ、マイタケ、シイタケを生産している。特にエノキダケとナメコの生産量は道内の約8割と圧倒的だ。「キノコの里」愛別町でおいしさを引き出す調理法を聞いた。
同町のキノコは工場内で温度・湿度管理を徹底して栽培し、年中収穫している。同町によるとエノキダケの2023年の出荷量は3533トン。年により道内の約9割が愛別産となる。

しつこくない、すっきりとした後味で、苦みや雑味もない。同町特産振興係長の飯浜正人さんは「淡泊な味だからこそ、さまざまな料理に合わせても程よい存在感を発揮する」と話す。
飯浜さんが紹介するのは、「エノキダケのパリッと揚げ」=末尾にレシピ。さくっとした食感で、揚げたてをご飯と食べると最高だ。

より手軽に食べるなら、エノキダケを2等分し、さっとゆででから、わさびじょうゆやめんつゆにつける。「そばとも良く合う」と飯浜さん。時間がない時は、シンプルにエノキダケ、マイタケ、シイタケを好みの肉と一緒に炒めてキノコ炒めを作ろう。塩コショウで味付けすることで、キノコのうまみがしっかりと感じられる。
キノコは、手軽なだし素材としても重宝する。豚バラ肉を食べやすい大きさに切り、塩コショウで炒め、切ったシイタケ、マイタケ、エノキダケを入れて焦げ色がついたら、適量の湯と顆粒(かりゅう)だしやみそを入れると、キノコのうま味たっぷりの「きのこ汁」が完成。体が温まり、寒い時期にぴったりだ。温かいそばの汁にエノキダケやナメコを足したり、カレーにシイタケ、エノキダケ、マイタケを足したりしてもおいしい。
キノコをおいしく食べるためのポイントも聞いた。一つ目は、洗わない。風味を生かすために洗わずに保存するのが基本。汚れが気になる場合は、水でしめらせたキッチンペーパーでふき取る。二つ目は、冷蔵と冷凍を使い分ける。その日使い切るなら生のまま冷蔵、それ以外は鮮度が落ちないように冷凍すると良い。
三つ目は種類別に冷凍する。エノキダケは石づきを切り落とし、使いやすい大きさに手でほぐして、冷凍用保存袋に入れ平らにして密封する。ナメコは、加工品は袋ごと冷凍する。袋に折り目をつけて冷凍すると調理時に必要な分だけ取り出せるので便利。株(生)は塩を加えた湯に、ほぐしたナメコをさっとくぐらせ、あら熱をとってから保存用袋に入れて冷凍しよう。
マイタケは、カットするか手でほぐし、保存用袋に入れて密封する。シイタケは、軸を根元で切り落とし、かさだけの状態にして、かさのみを保存用袋に入れて冷凍する。凍っていても切れるので、まるごと冷凍がお勧め。
これから、鍋の季節となり、キノコを購入する機会が増える。一工夫を加えておいしく味わおう。 (斎藤夏美)
*50年前 農家2人が挑戦
道内有数のキノコの産地愛別町。その歴史は、約50年前の1972年に2人の農家がエノキ栽培に取り組んだことから始まった。
それ以前、町内では主に米を生産していた。国による米の生産調整への対策として、町と農業関係者は、自然条件が似ている長野県で盛んだったエノキダケ栽培に着目。主産地に農業後継者2人を研修派遣し、栽培技術を習得させて道内初の試験栽培に取り組んだ。
当初は思うように育たず、長野へ電話で問い合わせながらの作業に。翌年初出荷したものの、道内ではなじみがなく、食べ方をPRするなど、売り込みにも多大な苦労があった。
努力を重ねて、数年後に軌道に乗せ74年、きのこ生産組合連合会を設立。その後、エノキダケ栽培は多くの農家に広がり、町の特産品に成長した。
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■エノキダケのパリッと揚げ
◇材料(4人分) エノキダケ6パック、卵1個、小麦粉1.5カップ、揚げ油適量、塩少々、パセリ適量、レモン1/2個
◇作り方
①エノキダケは根を取り半分に切ってほぐしておく。
②ボウルに卵と冷水(卵と合わせて1カップ)を入れて溶き、小麦粉、塩を加え、混ぜ合わせて衣を作る。
③ ②で作った衣に、エノキダケをさっくりと交ぜる。
④揚げ油を180度に熱しておく。
⑤木べらにたねを一口大に載せ、なるべく平らにして、すべらせるように鍋に入れ、衣がパリッとキツネ色になるまで揚げる。
⑥パセリを飾り、レモンを添えて出来上がり。
(北海道新聞2024年10月17日掲載)