【支笏湖畔】支笏湖畔の老舗宿「丸駒温泉旅館」は7月から、旅館の歴史と、足元から湧く全国でも珍しい温泉の仕組みを紙芝居で宿泊客に紹介している。紙芝居と温泉の掘削体験、天然露天風呂の入浴をセットにしたプログラムを「秘湯の学校」と銘打って提供しており、宿泊客に好評だ。
「それではこれより、秘湯のお話を始めたいと思います」。毎日午後4時ごろ、窓越しに支笏湖を望む旅館1階ロビーに従業員が紙芝居を朗読する声が響く。
紙芝居は「宿泊客の記憶に残る滞在をしてもらい、従業員と直接ふれあうきっかけにもなれば」(日生下(ひうけ)和夫総支配人)と7月中旬から始めた。「お湯が湧いてくる仕組みが分かり、楽しく温泉に入れた」「丸駒の歴史に興味を持った」など、小さな子どもを連れた家族を中心に反響があるという。
丸駒温泉は1915年(大正4年)創業で107年の歴史がある。紙芝居では「恵庭岳の麓に白い煙が見える」と聞いたという創業者の故・佐々木初太郎さんが登場し、当時の交通手段だった船で支笏湖対岸に調査に向かい、温泉を掘り当てた経緯を紹介。湖の水位と連動して季節ごとに湯面の高さが変わる温泉の仕組みを説明する。紙芝居はA3判で6枚。日生下総支配人の知人で旭川市在住のグラフィックデザイナー谷越のりあきさんが親しみやすい絵柄で表現した。
読み手は、前社長で現館主の佐々木義朗さんの長男孝悦さん(35)ら従業員が交代で担当する。孝悦さんは「紙芝居なので小さなお子さんにも関心を持ってもらえる。反応を見ながら分かりやすい表現を工夫したい」と話す。
紙芝居とセットの温泉掘削体験は、従業員の案内で宿泊客が敷地内の温泉が湧く場所をスコップなどで掘り、足湯体験を楽しんでもらう内容だ。
一連の取り組みは、かつては船でしか渡れなかった丸駒の強みを探った結果という。日生下総支配人は「体験を通じて秘湯らしさ、丸駒温泉らしさを追求していきたい」と話す。(犬飼裕一)
(北海道新聞2022年8月18日掲載)
老舗の強み 昭和レトロで集客*カルルス・鈴木旅館*黒電話や大福帳など展示*「懐かしさ楽しんで」