札幌伝統野菜のタマネギ「札幌黄」は、一般のものより肉厚で柔らかく、熱を加えるとより甘みが増す。これからの寒い季節に食べたくなる札幌黄のレシピを紹介する。
札幌黄は、「日本のタマネギ栽培発祥の地」とされる札幌市東区を中心に北区、白石区でも栽培が広がり、8月下旬から9月にかけて収穫される。この時期、本格的に出回り、スーパーやネットの通販サイトで購入できる。
JAさっぽろは、札幌黄のほか、キャベツの「札幌大球(たいきゅう)」、枝豆の「サッポロミドリ」、青唐辛子の「札幌大長(おおなが)ナンバン」、「札幌白ゴボウ」の5品種を札幌伝統野菜と位置づけ、栽培を後押しする。同経済部営農販売課の永田峻一さん(39)は「食味が良い半面、長期保存に向かない品種のため、購入したらなるべく早めに食べてほしい」と話す。
札幌黄の生産者らでつくる市民団体「ACネットワーク」が勧める食べ方は「札幌黄の玉ネギみそ」だ=末尾にレシピ。
電子レンジで加熱すると玉ネギの甘みが増し、調理時間も短縮できる。札幌黄は甘みがあるため、レシピでは砂糖の量を控えめにした。作り置きした玉ネギみそは、野菜の炒め物、ふろふき大根の味付けに活用できる。鶏肉やツナと交ぜて丼として食べるのもおいしい。
青果店「サンQ青果」(同市東区)代表で、野菜ソムリエの資格も持つ奥山善彦さん(50)の一押しは「札幌黄とキノコのちゃんちゃん焼き風」。札幌黄を輪切りにして、油を引いたフライパンで片面をじっくりと焼き、裏返してから、シメジ、シイタケ、エノキダケ、エリンギなどを入れて、塩コショウやバターを適量加えて焼く。「物足りなければ、豚バラ肉かベーコンを入れてもおいしい。大玉小玉を問わず、お手軽にできます」と話す。 (斎藤夏美)
*一時期は「幻」に 味の箱舟で復活
「札幌黄」の原種は、アメリカ産の「イエロー・グローブ・ダンバース」といわれている。味も形も悪く、保存も利かない品種だったが、1884年(明治17年)ごろから生産者の研究と品種の改良が進み、より品質の良い「札幌黄」が作られた。
その後、全国へ出荷されるようになったが、形や大きさがふぞろいで病気に弱く、品質が安定したF1種(一代交配種)に押され、徐々に生産農家が減少。いつしか「幻のタマネギ」と呼ばれるようになった。
生産農家は一時期、10戸程度にまで減少したが、2007年、スローフード協会国際本部(イタリア)が推進する世界遺産の食材版「味の箱舟」に認定されたことで再び脚光を浴びるようになった。歴史あるタマネギを復活させたいという思いから、栽培する農家が徐々に増え、現在は約30戸が計約16ヘクタールを作付けする。
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■札幌黄の玉ネギみそ
◇材料(4~5人分) 玉ネギ(札幌黄)L3個、砂糖大さじ1、みそ大さじ3、酒大さじ1、ごま油大さじ1
◇作り方
①玉ネギは半分に切ってから薄切りにする。
②耐熱皿に玉ネギを並べてラップし、500ワットの電子レンジで10分加熱する。
③フライパンにごま油をひき、玉ネギを中火で水分を飛ばすように炒める。
④砂糖、酒、みそを入れ、焦がさないように色が付くまで煮詰める。
(北海道新聞2024年11月15日掲載)