
【中標津】町内の竹下牧場(竹下耕介代表)の宿泊施設「ファームヴィラ拓」の建物やコンセプトが、優れたデザインやブランディングに贈られる本年度のグッドデザイン賞を受賞した。開拓の歴史や精神を伝え、宿泊者に「開拓」の行動を促す思いを込めたことや、電力の自給自足を極寒地で実現したことなどが評価された。
同賞は公益財団法人日本デザイン振興会(東京)が主催。工業製品だけでなく、ビジネスモデルや地域づくりの取り組みなども対象となる。本年度は審査対象の5773件のうち1579件が受賞した。札幌の設計事務所「ATELIER O2(アトリエオーツー)」の大杉崇代表との共同受賞となった。
1日1組限定の1棟貸しで、昨秋ごろ本格オープンした。地域を訪れる人に、開拓の象徴である大地を体感してもらうための宿泊施設を造ろうと考え、牧草地や格子状防風林といった広大な風景に臨む場所に建てた。
大自然と調和する建物を意識し、道沿いの木々に注ぐ太陽光を妨げない三角屋根が特徴の木造平屋。開拓時代に使われた道路に沿って建てられた。
内部は森の小道をイメージし、まっすぐではない廊下は先が見えない期待感を生む。客室や食堂、ラウンジやトイレなどの部屋は、廊下と垂直ではなく不規則な角度で配置され、特徴的な設計となっている。
電力会社の送電線と接続せず、自家発電だけで賄う「オフグリッドシステム」を導入し、屋根のソーラーパネルで発電した電力を蓄電して使う。建物は断熱性と気密性が高い構造。
竹下牧場はロゴとブランディングが2021年度にも同賞に選出。竹下代表は「何もない場所に身を置き、五感で感じてほしい。滞在後、何かを始めよう、挑戦しようという気持ちになってもらえたらうれしい」と話す。 (野口今日子)
(北海道新聞2024年11月27日掲載)