【浜中】道東産マイワシを船上で箱に氷詰めした「氷鮮まいわし」を、食用として浜中ブランドに育てる事業が本格化している。浜中漁協が中心となり町と連携し、脂乗りと鮮度を売りに消費拡大へPR活動に力を入れている。
「珍しいわね。どうやって食べるの」。コープはまなか前で昨年12月、霧多布港に水揚げされた形の良い氷鮮まいわしを、浜中漁協職員が買い物客にレシピを添えて配った。地元での消費促進を目指したイベントで、用意した75人分は2時間でなくなった。
水産資源が減少する中、マイワシは近年、道東沿岸で水揚げ量が回復。ただ鮮度保持が難しいことから単価も安く、主に肥飼料など加工向けに出荷され、食用としてあまり出回っていない。同漁協によると2024年の水揚げは約940トン(速報値)あった。
氷鮮まいわしは、その課題を解消しようと釧路総合振興局が2020~22年度に行ったマイワシ消費拡大事業で考案。事業に協力した浜中漁協がブランドを引き継いだ。
今回の事業は、氷鮮まいわしの消費・販路拡大を図ることで、浜中漁協が「主要魚種」に位置づけるイワシ全体の需要を底上げするのが狙い。
事業は昨年11月に本格化し、PRポスターやのぼりを作製。地元飲食店などに配り、売り込んでもらう。商品開発も飲食店などに働きかけている。昨年暮れには、NPO法人霧多布湿原ナショナルトラストの協力を得て、氷鮮まいわしを使ったピザの試食会を霧多布湿原センターで開いた。ピザの具材は、手作りしたオイルサーディンやタカナシ乳業のチーズなど。ピザを作ったトラストの村上真喜子さんは「イワシが新鮮なので身も柔らかい。骨も気にならない」と述べた。
試食した同漁協の山崎貞夫組合長は「臭みがなく、子どもでも食べられる。とれなくなったサンマに代わる魚として食べてほしい」と力を込めた。斉藤清隆町長は「氷鮮まいわしブランド化は水産業活性化と地域振興につながる」と述べた。
事業では新年度以降、札幌や首都圏でPRイベント開催を検討している。(大滝伸介)
(北海道新聞2025年1月22日掲載)