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【剣淵】1年半余り前に閉業した倉田精肉店(町西町)が2月17日、営業を再び始める。こだわりのたれを絡めたジンギスカンが人気で、「再開してほしい」という町民の声や町の要請を受け、店主の倉田秀樹さん(64)が事業継承を前提に再開を決めた。町は町内唯一の精肉店の将来の存続に向け、同店の味や技術を引き継ぐ地域おこし協力隊を募集している。
同店は1965年ごろ、倉田さんの父親が創業。札幌の和食料理店の板前として働いていた倉田さんが29歳の時に町に戻り、店を引き継いだ。
タマネギとショウガ、ニンニクがベースの特製だれのジンギスカンが看板商品だ。倉田さんは「野菜を生かした絶妙な甘さのたれ。肉とのバランスにこだわり、完成に2、3年かかった」と振り返る。町民は、家族や親戚が集まると、同店のジンギスカン肉を味わい、いつしか「剣淵の味」となった。
しかし、5年ほど前から物価高の影響を受け、経営状況は少しずつ悪化。同じ時期に母親ががんを患い、急な体調悪化で夜間に名寄市立総合病院へ付き添うこともあるなど介護負担も重なった。「疲労もたまっていた」と、倉田さんは2023年5月に店をたたんだ。
突然の閉店に町民からは驚かれた。会う人ごとに「もうやらないの」と声をかけられ、「うれしかったけど、辞めて少し後悔した」と倉田さん。60代で店を辞めたことに負い目もあったという。
再開は町民が後押しした。店の復活を望む声が多くあり、町は昨年11月、倉田さんに店を引き継げないか提案した。倉田さんは「もう一度食べたいと言ってくれる人がいるなら」と快諾。町は、今年1月から事業を引き継ぐ地域おこし協力隊の募集を始めた。
跡継ぎが見つかるまでは妻加奈子さん(60)と息子の理誉(りょう)さん(28)の3人で店を切り盛りする。倉田さんは「再開を待ってくれる人がいるのはうれしい。また末永くお願いします」と準備を進める。
地域おこし協力隊に関する問い合わせは町総務課、電話0165・26・9021へ。 (東桜子)
(北海道新聞2025年2月8日掲載)