
北海道大学(札幌市)が創基150周年記念事業の一環として、日本清酒(札幌市)と共同で、「北海道大学純米酒 奥智(おくち)」を開発し、発売しました。北大の前身の札幌農学校が1876年に開校したことを受けたもので、北大農場産のコメが原料です。まろやかさと淡麗さのあるやや辛口に仕上がっており、北大構内の売店などで販売するほか、構内のカフェでは関連メニューを提供します。

北大の前身の札幌農学校は1876年に開校し、2026年に150周年を迎えます。これを機に、北大は「光は、北から」をキャッチコピーに記念事業を進めています。記念事業としては、国の登録有形文化財の古河講堂の復元と利活用、150周年記念誌の編纂などに取り組んでおり、今回の日本酒の開発、発売もその一環です。
原料のコメは、北大農場で主に農学部の学生が生産。これまでうるち米を作付けしていたポプラ並木東側の0.2ヘクタールに2024年、酒造好適米の「彗星」を作付けし、秋に約450キロを収穫しました。日本清酒がこれに新十津川産の酒造好適米「きたしずく」を同量程度加え、純米酒を醸造しました。
奥智は優しい吟醸香があり、口当たりが柔らかく、酸もこくもある味わい。「まるで北大の学生のように、今は若々しく、今後味わい深くなることが期待されるお酒」(北大)が完成しました。冷や酒からぬるかんがおすすめで、どんな料理にも合わせやすい濃醇辛口です。720ミリリットル、1800本限定で、税込み2915円。北大インフォメーションセンター「エルムの森」内のオリジナルショップや北大生協、北海道のアンテナショップなどで取り扱います。また、エルムの森内の飲食店「カフェdeごはん」では、奥智の酒粕を使った甘酒や料理メニューも提供予定です。

発売に当たり、ネーミングとラベルのデザインは、学生から公募しました。96人から150点以上の応募があり、大賞と準大賞を選出。準大賞作品を初リリースの今回の名前とラベルにし、大賞作品を150周年に当たる2026年発売の日本酒に活用します。
準大賞に選ばれたのは、工学院修士2年の河崎聖也さん。150周年のキャッチコピー「光は、北から」をもとに、北極星をデザインしようと着想し、さらに北大のシンボルマークにもあるオオバナノエンレイソウを組み合わせました。名前は、オオバナノエンレイソウの花言葉「奥ゆかしさ」から、研究することで、「奥を知る」の意を込めて「奥智」と付けました。

大賞には、薬学部5年の野村郁子さんの作品が選ばれました。「光は、北から」のキャッチコピーから、研究でもひらめきを大切に-との思いを込め、「北の閃き(ひらめき)」と名付けました。デザインは3枚の花弁と3枚のがくのある、オオバナノエンレイソウの形をモチーフにしています。野村さんは幼いころから書道をたしなんでおり、自ら筆をとり、名前とデザイン、「sparkle from Hokkaido university」と記しました。

北大農場では2025年春、「彗星」に代わって「きたしずく」を作付けし、秋に収穫したコメで、2026年に「北の閃き」を発売予定です。北の閃きは、全量を北大産のコメでつくることを目指しており、コメの生産だけでなく、有志を募って学生も醸造に関わる予定です。

3月下旬に北大で開いた報道関係者向け説明会で、横田篤副学長は「日本酒の発売は、札幌農学校が技術開発と人材育成に貢献したことや、北大が掲げるフロンティア精神や実学の充実にもかなうもの」と説明。北大北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士センター長は「札幌のコメと札幌の水でつくる日本酒ができたのは、喜ばしい」と話しました。